2020 Fiscal Year Research-status Report
家事事件の実務的課題からアプローチする実体法理の再構築
Project/Area Number |
19K01392
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
道垣内 弘人 専修大学, 法務研究科, 教授 (40155619)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 准教授 (00540155)
石綿 はる美 東北大学, 法学研究科, 准教授 (10547821)
大島 梨沙 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20580004)
幡野 弘樹 立教大学, 法学部, 教授 (40397732)
西 希代子 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (40407333)
木村 敦子 京都大学, 法学研究科, 教授 (50437183)
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 財産分与 / 子の引渡し / 子の監護 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の成果をとりまとめ、2020年12月に、『家事法の理論・実務・判例4』(勁草書房)を公刊した。2019年度のテーマであった財産分与に関して、裁判官の松井芳明氏、弁護士も大森啓子氏から協力を受けてきたが、それぞれ「人事訴訟事件における財産分与の審理について(審理の硬直化、長期化を避け、迅速かつ適正な解決を図るための方策)」、「分与対象財産と分与割合に関する考察──裁判例を通して」というかたちでまとめてもらった。その上で、研究分担者である久保野恵美子が、「共有論理による清算的財産分与の限界と課題」として理論的な分析を示した。また、池田清貴、佐野みゆき、鈴木裕一、松原正明、ローツ・マイアの協力を得て、研究代表者の道垣内弘人が、「子の引渡しをめぐって」という座談会に参加し、実務を明らかにするとともに、2020年度の研究の準備を行った。 2020年度は、子の監護をめぐる諸問題を中心的なテーマとし、9月に元家庭裁判所調査官の鈴木裕一氏より裁判所実務の現状を聞き、11月に弁護士の掛川亜季氏より弁護士の立場からの見解を聞いた。その上で、2021年2月に、研究分担者の石綿はる美が、学理的な立場から問題を総括した。その結果は、2021年10月頃に、『家事法の理論・実務・判例5』(勁草書房)として公刊される予定である。 さらに、松原正明氏の協力を得て、当期の家事法裁判例を網羅的に検討する作業を継続しており、これについては、別途、出版の予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
毎年、中心的なテーマについて、適切な実務家の協力を得て、多面的な分析を行うことに成功している。 財産分与については、たんに衡平の観点からのみ議論をするのではなく、背後にある共有理論を十分に検討することの必要性を明らかにすることができ、これは、これまでの実務に対する一定の貢献となったと思われる。子の監護についても、たとえば、子を置いて別居することの意味を、たんにイメージとして無責任である、というだけでなく、法的な分析としては、子を連れて行くことの方が違法であり、置いていくことをマイナスに評価すべきではない、という観点を提示することができた。 ただ、テーマの数が予定よりも少なくなっている。これは、コロナの中、集まっていろいろな議論をするということが妨げられたことも原因となっているが、家事法全般の研究を深めるためには、もう少しテーマを増やすべきであると思われる。この点、改善の必要性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年は、前年度の研究成果をより精緻なものに仕上げ、『家事法の理論・実務・判例5』(勁草書房)として公刊すること、ここ数年の家事法裁判例を網羅的に検討する書物を公刊することが予定される。さらに、新しいテーマとしては、「児童虐待」を扱う予定にしており、代表的な実務家にも、すでに協力を依頼し、快諾を得ている。 同時に、同性婚の問題、および、第三者を監護権者として指定するなどの立法的問題について検討を行う予定にし、前者は、関係する裁判例の検討を始めている。
|
Causes of Carryover |
本研究は、共同で討議をしながら進めることを予定しており、そのため、研究会旅費を多く計上していた。ところが、新型コロナウィルスの蔓延により、集まっての研究会が難しくなり、そのため、Zoom等で研究会を行わざるを得なかったため、旅費等の支出が少なくなった。しかし、忌憚のない相互批判、細かな詰めなどのためには、やはりリアルでの研究会が必要であり、2021年度、事態が改善すれば、積極的に研究会を行いたいと思っている。そのためには、旅費が必要であり、次年度使用額は増加した研究会旅費に充当する予定である。
|
Research Products
(11 results)