2020 Fiscal Year Research-status Report
情報保護法制における人格的利益の保護に関する基礎的考察
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19K01415
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
蘆立 順美 東北大学, 法学研究科, 教授 (60282092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 幸典 東北大学, 法学研究科, 教授 (20241507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 著作者人格権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、著作者人格権の特性や基本的原理について、知的財産法と刑事法の両面から分析を行うものであり、他法における人格的利益の保護に関する議論と比較、相対化することにより、著作者人格権の特性を検討する点に特徴を有する。 2020年度は、前年度に引き続き、研究代表者が、著作者人格権、特に氏名表示権を中心として資料の収集、分析を行った。氏名表示権に関しては、今年度、最高裁判例(最判令和2年7 月21日民集74巻4号1407頁)が示されたことから、学説においても議論が活発に行われており、多くの文献が公刊された。今年度は、当該最高裁判決及び同判決に関する評釈、論文についても分析の対象として検討を進めた。その成果の一部として、当該最高裁判例に関する判例評釈を執筆し、公刊予定となっている。また、同一性保持権における人格的利益の保護との比較も行いつつ、分析を進めた。 また、本年度は、上記の研究に加えて、研究代表者において、パブリシティ権に関する文献調査および分析を開始したが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、パブリシティ権をテーマとした開催予定であった学会が延期となったほか、出張を伴う資料収集の実施が困難になったことなどから、本格的な調査、検討作業は、次年度にも継続して行う予定である。 なお、刑事法分野を担当する研究分担者は、今年度、名誉毀損罪や侮辱罪における人格的利益の保護に関する国内外の文献等の収集を進め、分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においては、著作権法(氏名表示権、同一性保持権)、刑事法(名誉毀損罪等)、パブリシティ権に関する日本の裁判例の分析、邦語文献及び外国法文献の収集をおこない、それらの分析・検討を進めた。新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、出張を伴う資料収集の実施が困難となったほか、一部研究会等が延期になるなどの影響を受け、また、一部の外国法文献の出版等が遅れている状況にあるが、その他については、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、前年度に引き続き、パブリシティ権に関する邦語文献、外国法文献の収集、分析及び裁判例の分析を進めるほか、それらの分析から得られた知見に基づき、著作者人格権との比較、相対化を行い、その検討結果をまとめる作業にとりかかることを予定している。 また、刑事法における人格的利益の保護に関する議論分析から得られた知見についても、適宜共有を図るため、意見交換会を実施し、議論を行うことを予定している。2021年度の後半は、これらの結果を踏まえて、さらに関連領域との比較、整理を行い、著作者人格権の特性および基礎理論について総合的な検討を実施し、その成果について、論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、出張を伴う資料収集の実施が困難となり、加えて、一部研究会等が延期またはオンラインになるなどの影響を受けたため、予定されていた旅費の使用が困難となったこと、および、一部の外国法文献の出版等が遅れたことである。次年度は、新型コロナウィルスの状況を考慮しつつ、小規模での意見交換会の実施を検討し、また、出版が遅れている文献の収集や、新型コロナウィルスの感染状況が比較的落ち着いている地域での資料収集(加えて、文献現物取り寄せを多用する)などを予定している。
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