2020 Fiscal Year Research-status Report
日米の土地環境問題における土地所有者の責任と地方自治体の役割
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19K01435
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
黒坂 則子 同志社大学, 法学部, 教授 (60441193)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 土地利用規制 / 太陽光発電設備 / 墓地、埋葬等に関する法律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環境問題のなかでも、不動産をめぐる環境問題について、土地所有者が負うべき責任や地方自治体の土地利用規制権限のあり方、そして地方自治体と国との役割分担などを中心に検討するものである。 2020年度は、昨年収集した日米両国における土地利用規制についての包括的な文献を読み、判例の動向を調べた。両国ともにまだ研究の緒に就いたところであるが、わが国については、その設置が比較的容易とされる太陽光発電設備への関心が高まる一方で、周辺住民の反対運動が高まっている現状にあり、裁判例も見られるようになってきたため、これを検討することとした。具体的には、①環境権に基づくメガソーラー設備の設置等の差止請求事件(大分地判平成28年11月11日LEX/DB文献番号25544858)、②太陽光発電設備に対する不同意処分の取消請求事件(東京高判平成30年10月3日判自451号56頁)、③国定公園の特別地域内における太陽光発電設備の許可処分の義務付け等請求事件(東京高判平成31年3月20日LEX/DB文献番号25563015)を取りあげた。これらの判決は、太陽光発電設備を設置する事業者や同設備を規制する自治体の実務に少なからぬ影響を与えるものと思われる。そこで、これらの裁判例を取りあげ、太陽光発電設備の設置をめぐる法的諸問題について検討し、その成果を論文として公表した。また、地方自治体の土地利用規制のあり方を考えるうえで、墓地等の経営許可をめぐる紛争も注目されるが、これに関し、墓地経営不許可処分取消等請求事件(東京高判平成29年8月9日判自432号57頁)の評釈を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画から、昨年収集した日米両国における土地利用規制についての包括的な文献を読み、判例の動向を調べる予定としていた。また本年度(もともとは初年度に渡米予定であったが、コロナ禍の影響等で今年度に変更した)においては、アメリカにヒアリング調査に行く予定としており、昨年収集した文献に加え、アメリカでのヒアリング調査を行ったうえで研究を深化させ、その成果を公表する予定であったが、コロナ禍の影響で渡米が難しくなったため、わが国の土地利用規制の現状について、主に関連裁判例の研究を先に進めることとした。具体的には、上記のように太陽光発電設備をめぐる紛争や墓地の経営許可をめぐる紛争に焦点をあてて研究し、その研究成果を公表した。引き続き、研究をすすめていきたい。以上のように、研究計画を変更したものの、研究自体はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、コロナ禍が収束すれば渡米し、アメリカの土地利用規制に関する調査を行うことができれば、それを優先的に行うこととする。ただし、渡米できなかったとしても、Jeffrey Lubbers教授(American University)にオンラインでヒアリングするなどして、研究を進めていきたいと考えている。まだアメリカに関する研究成果を公表できていないので、今年度と次年度にかけて研究し、その成果を公表していきたいと考えている。わが国についても、引き続き不動産関連判例を検討していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度、アメリカにてヒアリング調査予定としていたが(もともとは初年度予定を延期)、コロナ禍のため渡米できず、旅費分が残っている。次年度以降、渡米してヒアリング等調査を行いたいと考えている。
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