2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01454
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
河崎 健 上智大学, 外国語学部, 教授 (20286751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ / 政党 / 連邦参議院 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者は当該年度、在外研究によりほぼ1年間、フンボルト大学社会科学部の客員研究員としてドイツのベルリンに滞在した。その間、本研究の一部をなす連邦参議院構成員のキャリア研究を中心に進めてきた。連邦制のドイツでは各州の権限が強く、連邦参議院を通しての拒否権発動が重要であるためである。 連邦参議院構成員は各州の州閣僚である。そこでハンドブック等を手掛かりに、戦後からの全州の州閣僚約1700人の政治キャリアを分析した。 その結果、現段階では、州閣僚のキャリアが大別すると、(1)州議会出身者(議院内閣制型)、(2)政府・議会外の社会の諸セクター出身者(大統領制型)、(3)州政府内(とりわけ事務次官)出身者(日本の都道府県庁型)に類型化できることが確認された。さらにリクルートメントの際の政党キャリアの重要性も確認されている。とりわけ特徴的なのは、ドイツの州も議院内閣制であるにもかかわらず、州議会に議席をもたない閣僚(上記の(2)と(3)型)が半数近くいる点である。その理由としては、連邦参議院の存在、州レベルでの人材不足、特殊な選挙制度・候補者擁立制度、州議会の規模の小ささ、などが理由として考えられる。さらに、議会の応答性が高められた結果、女性議員や小政党の議員が増えたことで議会内の代表が細分化されて、専門的見地からの州議会からの閣僚をリクルートすることが難しくなったことも挙げられよう。 今後はこの分析を精緻化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滞在中は、日本語での論文執筆の傍ら、フンボルト大学のシルビア・フォン・シュタインドルフ教授のゼミナール(2019年7月)と、学部主催のワークショップ(2020年1月)で研究成果の報告を行った。 上記のように、本研究の構成部分のひとつである連邦参議院構成員のキャリア分析はほぼ終了することができた。連邦議会内の分析が残っているものの、全体としてはほぼ予定どおりの進捗状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、連邦議会の拒否権発動プレーヤーの分析を進めていくことになる。具体的には、まず、主要な常任委員会所属メンバーの職業的特徴を分析する。ドイツでは政権毎に主要省庁の統合と分割が行われることがある。例えば、2000年以降には、経済省と労働省の統合による経済労働省の誕生、食糧農林省への消費者省の所属による食糧農林消費者省の成立などである。連邦議会の常任委員会もこれに対応する形で再編成がなされている。目下のところの分析では、再編成の結果、一部の常任委員会に所属する連邦議会議員の社会的特徴に変化が生じていることが分かっている。例えば、保守・自由主義系会派内の農業ロビーの議員が主であった食糧農林委員会に、消費者省との統合の結果、消費者政策を専門とする議員、社会政策を専門とする保守・自由主義系議員が移動するようになったことである。このような委員会内の所属議員の変化が、利益媒介構造にどのような変化を及ぼしているのか、具体的には、立法過程でどのような特徴が見られるのか、この点を調査・分析することが次の課題として想定されている。
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Causes of Carryover |
研究者は当該年度に在外研究でドイツに滞在した。研究発表で一時帰国した自分に出張費を使用したものの、物品費については、所属大学での検収手続きを海外から行う場合に煩雑であることから、書籍代については研究者の大学からの個人研究費を優先的に宛がうことにした。またその他の物品費(AV機器、高価な文具)は運搬などの理由から、当該年度の購入を断念し、次年度に廻すことにした。
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Research Products
(5 results)