2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01454
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
河崎 健 上智大学, 外国語学部, 教授 (20286751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 連邦議会 / ドイツ / 政党 |
Outline of Annual Research Achievements |
不人気政策がいかにして決定されるのか。本研究はそのような問題意識の下、ドイツの外交と国内政策のうち、いくつかの分野に着目して、研究を進めてきた。民主制国家において為政者には、選挙を意識して有権者・支持者の意向に配慮する必要がある反面、不人気な政策を遂行せざるをえないケースも少なからずある。その場合、為政者やその周囲のアクターはいかなる手段を講じるのだろうか。このような問題は本研究が直接対象とするドイツを越えて広く民主制国家が直面する問題であると考える。その意味からも本研究には、他国の事例であってもわが国で研究する意義があるように考えられる。 本研究では、冷戦終結後のドイツの外交政策と、経済社会政策および農業政策に焦点を当てて、上記の点を検討してきた。外交政策については、ポスト冷戦期において我が国同様に第二次世界大戦の敗戦国でありながら経済大国に発展したドイツが、「普通の国」として軍事貢献を求められるようになった中で、平和主義を標榜する左派系の政党、社会民主党や緑の党が如何にして「軍事貢献に加担」するようになったかを分析した。その際、自党のイメージや支持率を極力損ねないようにしつつ、国際的な要請に対応するために、いかなる手段を講じてきたかが分析されてきた。具体的には、軍事行動の対象となる国の惨状や独裁者の存在を強調して軍事貢献の正当化を図る、連邦軍派兵の決定を右派系政党多数派の議会で決定するなどである。また経済社会政策では、シュレーダー政権の構造改革政策AGENDA2010を実施するに当たり、社民党政権が連邦政府の構成を変更した様などが分析された。 他方、本研究の発案時には想定していなかった事態(シリア難民受け入れ、ウクライナ戦争の勃発など)が起こり、このような政策も本研究の趣旨に合致すると考えられ、今後の研究課題にできればと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究については、下記の点で成果があった。第一に関連する文献の精読を通して、ドイツ連邦議会にまつわる政治過程を広範に理解することはできたと考えている。現在、その成果は、研究書として刊行するため準備を進めている。第二に、本研究では、上記のテーマで研究を進める上で、とくに連邦議会議員と連邦参議院メンバー個人個人の政治キャリアや専門性に着目するアプローチを試みてきた。そのためのデータベース作りはかなりの程度進めることができた。とりわけ、ドイツの上院である連邦参議院メンバーは州閣僚であることから、州政治の特徴に言及することも可能になり、新たな知見を得ることができたと考えている。第三に、本研究に関連するテーマである2021年ドイツ連邦議会選挙の結果と分析、ドイツ連邦議会議員の議員活動費に関する報告を成果として発表することができた。 しかしながら、一連のコロナ禍が収まらず、2020年度に引き続き2021年度も渡独しての資料収集や関係者インタビューができなかったことから、当初予定していた十分な成果をあげられたとは言い難い。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のための文献渉猟やデータベース構築はかなりの程度進んだ。本研究の課題をまとめて書物として発表するにはやや時間がかかりそうだが、その一部や近々にまとめて出版物として刊行する予定である。 また一連のコロナ禍で資料収集やインタビューのための渡独ができず予算を執行しきれなかったが、予算執行の延長を認めていただけたため、2022年度中に1回、ないし2回の渡独をして、求めている資料の収集や関係者インタビューを図る予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が収まらず、交付年度内に予定していた複数回の渡独を行うことができなかった。そのため、渡航費を十分に使用することができなかったため、次年度使用を申請した。2022年度にはおそらく2回程度の渡独は可能と思われるため、年度内に渡航費を中心に残額を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)