2019 Fiscal Year Research-status Report
Josef Kaizl: Political Leader and the Transformation of Czech and Cisleithanian Politics at the Turn of Century
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19K01482
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中根 一貴 大東文化大学, 法学部, 准教授 (10600645)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヨゼフ・カイツル / 政治史 / チェコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度では、ヨゼフ・カイツルに関する先行研究とバイオグラフィーを精査するとともに、カイツルが活躍した1890年代のチェコ政党政治とハプスブルク君主国の非ハンガリー部分であるシスライタニア政治を再検討した。それにより、リベラリズムに依拠しながらも社会問題と国家の役割を強調したカイツルの思想と彼の政治指導の関係が十分に検討されていないことを明らかにした。さらに、カイツルの政治指導の分析が、シスライタニア政党政治とネイションごとの政党政治の連関の解明に資することを示した。以上の成果は「世紀転換期チェコ政治におけるリーダーシップ研究の可能性――ヨゼフ・カイツルに関する研究の現状と課題」にまとめた。また、国内外における今までのヨーロッパ政治史関連の研究や第二次世界大戦後の東欧史に関する研究などを振り返る作業にも着手した。 また、現代チェコ政治で注目を集めるポピュリズムと政党政治を分析した「『チェコのベルルスコーニ』の挑戦――ANOの成功とチェコ政党政治」を公表した。同論文により、現在のチェコの議会制民主主義を検討するに際して、19世紀後半から20世紀初頭までのチェコ政治における政治思想が影響を及ぼしていることを再確認した。 2019年度中に実施した現地調査では、1890年代前半におけるボヘミア総督府の政党や政治運動に関する調査報告書や同時代の政治家の個人文書、当時の保守系の政党が発刊していた新聞を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に現地での史料収集を実施することにより、基礎的な文書館史料の収集と当時の新聞の確認をすることができた。 2019年度には、研究会での報告に加えて、論文1本と研究ノート1本を公表した。さらに、本研究と関連する共同研究を新たに2つ開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスのために現地での史料収集や研究者との対面での交流が当初の予定通りに実施できない可能性が高い。それゆえ、2021年2月に現地調査を実施することを想定しつつも、これまでに集めた一次文献や二次文献の分析と先行研究の整理を中心的に行う。後者に関しては、カイツルが師事したG.シュモラーが代表的な人物とされるドイツの新歴史学派について考察を深める必要がある。 また、後の初代チェコスロヴァキア大統領となるT.G.マサリクとカイツルの間で行われた1890年代の「チェコ問題」論争について再検討した論文を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスなどのために予定していた国内学会に参加できなったことが次年度使用額が生じた理由である。余剰分は、今年度に関連書籍などの購入に充当する予定である。
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