2020 Fiscal Year Research-status Report
Josef Kaizl: Political Leader and the Transformation of Czech and Cisleithanian Politics at the Turn of Century
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19K01482
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中根 一貴 大東文化大学, 法学部, 教授 (10600645)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヨゼフ・カイツル / 政治史 / チェコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度では、小ネイションとしてのチェコ・ネイションをめぐって、後の初代チェコスロヴァキア大統領となるT.G.マサリクとカイツルの間で行われた1890年代の「チェコ問題」論争を、近年の先行研究を参考にしながら再検討した。それにより、ナショナリズムの観点から検討される傾向にあった同論争が、政治的な色彩を強く帯びていると同時に、世紀転換期における社会・経済・政治変動に対する処方箋とリベラリズムをめぐって行われていたことを示した。さらに、カイツルが、社会的・経済的・政治的な個人の解放が進むことを肝要と考えることに示されるように、古典的なリベラリズムの枠内で議論を展開しようとしながらも、社会的・経済的な問題に対応する必要性から国家の役割の見直そうとしていることを明らかにした。以上の成果として、「「チェコ問題」再考――世紀転換期チェコ政治におけるネイション・リベラリズム・国家」のタイトルの報告を行った。 近年、リベラリズムへの関心が今一度高まる一方、ハプスブルク史研究や近代中東欧史研究においてはハプスブルク君主国という「帝国」と継承諸国の連続性/断絶性に関心が集まっている。とりわけ後者の論点については、世紀転換期のハプスブルク君主国における政治指導者や知識人の国家観を検討する必要があるであろう。このような研究動向を重視しながら、カイツルの政治思想や政治実践と、世紀転換期の政治史を引き続き分析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスが終息しないために当初予定していた現地調査を実施することができなかった。そのために予定していた研究会での報告は実施できたが、その成果を論文にまとめることができなかった。 一方、本研究と関係する共同研究を新たに1つ開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カイツルの政治指導と政治実践を明らかにするために、引き続き彼のリベラリズムや国家観を分析していく。さらに、彼の政治家としての本格的なキャリア形成を開始した時期である1890年代前半のチェコ・オーストリア政治史を解明するために、史料の整理と分析に本格的に取り組む予定である。 現在、国内外で実施されているワクチン接種が順調に進んだうえで、日本を含む各国の出入国の制限が緩和されれば、2022年2月に現地調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの終息を想定して計画していた国外での現地調査を実施できなかったことが次年度使用が生じた理由である。余剰分は、今年度末に予定している現地調査と関連図書などの購入に充当する予定である。
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