2021 Fiscal Year Research-status Report
Josef Kaizl: Political Leader and the Transformation of Czech and Cisleithanian Politics at the Turn of Century
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19K01482
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中根 一貴 大東文化大学, 法学部, 教授 (10600645)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヨゼフ・カイツル / 政治史 / チェコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度では、「帝国」としてのハプスブルク君主国と継承諸国の間における継続性と断絶に対する研究上の関心の高まりを意識して、世紀転換期のオーストリア政治の変容と青年チェコ党およびカイツルとの関係について検討した。特にチェコ人政党研究では、社会的経済的な部分利益を代表する大衆政党が世紀転換期以降に発展した結果として生じたチェコ政治の多極化に関心が集まってきた。しかし、オーストリアにおいても、個々の議員と選挙民、官僚との間に存在したマイクロな利益媒介などのクライエンティリズムが広がっていたことを考慮すると、南東欧諸国に広がっていた政権の「たらい回し」や無定形な中道派の形成という慣行が定着しなかったことが解明すべき疑問として生じる。そのような慣行が成立しなかった理由の一つとして、特にオーストリアにおける政治家と官僚による権威主義的な政治手法を挙げることができるであろう。青年チェコ党に関して言えば、不十分な党内ガヴァナンスが歴代政権との強固な信頼関係の構築を妨げてきた点が指摘できる。政権の「たらい回し」や無定形な中道派の形成という慣行が定着しなかったことは、20世紀初頭の帝国議会におけるナショナリストや大衆政党の「活躍」につながったのであった。一方、1890年代初頭には党内ガヴァナンスの確立に力を入れたカイツルは、その成果をさらに発展させることができず、結果として自らが主導した政府との交渉の結果をプラハで党務に従事する政治家に受け入れさせることに苦労したのであった。この点はカイツルの政治指導の限界の1つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に引き続き世界的に新型コロナウィルスが猛威をふるったために現地における資料収集を実施することができなかった。特に、今回の計画で新たに実施する予定であったウィーンにおける資料収集が実施できないことが研究の進展に影響している。その影響をも受けて、2021年度に発表する予定であった成果が2022年度にずれ込んでしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
国際情勢の大幅な変化も加わったので2022年度も予断は許さないとはいえ、入国規制が緩和されている状況に鑑みて、本年度は現地での資料収集を実施する予定である。また、現地での資料収集の計画を変更する可能性があるので、それにあわせて研究計画も変更することを視野に入れる。 研究については、青年チェコ党に関する分析を進めるとともに、今までの研究成果の公表に力を入れる予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナ禍により海外渡航が困難であったことと国内学会もオンラインで開催されたために旅費を使用する機会がなかった。2022年度は、国内学会も対面での開催が予定されているものもあるので、学会参加のために旅費を使用する。また、入国制限の緩和が継続するのであれば、旅費を利用して国外での資料収集を実施する予定である。
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