2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01542
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
奥村 保規 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90383950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
糟谷 祐介 神戸大学, 経済学研究科, 講師 (20792419)
平田 大祐 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40754809)
北原 稔 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80468727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マッチング / 保育所 / 効率性 / 公平性 / 耐戦略性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,保育所の割当システムを含むマッチングシステムの公平性と効率性について議論を深めた。既存研究において,マッチングシステムの公平性と効率性の間にはトレードオフの関係があることが知られている。すなわち,ある程度公平な割当を行うことに目をつぶれば,効率性を高めることはできるし,効率性が低くてもよいのであれば,より公平な割当を実現することは可能なのである。 本研究では,公平を担保するために設けられている保育所を含む受け入れ側の優先順位を弱めることで,効率性を高める方法を議論した。すなわち,例えば,優先順位が,所得が1円でも低い方を優先するというルールが採用されている場合,「2つの家庭で,所得の違いが100万円未満の場合は,優先順位をタイとするが,それ以上の場合は低い方の家庭を優先する。」といったルールにすることによって,マッチングの効率性を改善することができるが,その方法を導入した。このような優先順の弱め方は既存研究で考えられていた弱順序とは異なり,優先順位が半順序となることを許さなければならない。また,どのような場合にどの程度優先順位を弱めるのができるか,あるいは弱めることが妥当といえるか,についても議論した。 また,昨年度に引き続き,割当に際し,優先順位を決定するために使用する個人の情報に関して,虚偽を報告したり,あえて情報を変えたりするような戦略的なインセンティブについても引き続き議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,昨年に引き続き,新型コロナウィルス感染症の流行により,学会発表や研究打ち合わせを行うことが難しという問題が発生した。そのため,当初の予定よりは遅れ気味である。ただし,昨年度の反省を踏まえてZOOMやメールなどによってできる限り円滑な研究をすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の流行状況は予測が難しく,対策を必要とする状況は続いているといえる。したがって,昨年度に引き続き,ZOOMなどのITツールをさらにうまく利用して,研究を進めたい。今後は流行状況が改善した場合は,対面の学会や研究会への参加,研究相談などの再開を検討したい。 既存研究のサーベイやオンラインでの話し合いを通じて研究を進めたが,その中で,保育所や学校への割当を考えるうえで,家庭の状況や性別,人種などの多様性が重要であると考えた。そのため,本研究では,多様性などに配慮したマッチングシステムを議論する。具体的には,多様性に配慮しつつ,上述の公平性,効率性をなるべく高めるような割当を得ることができるマッチングシステムを考えている。また,そのようなマッチングシステムの性質を整理し,他の問題への応用の可能性を探る。 また,戦略的なインセンティブについてはどのような戦略が実際に用いられているかを調べることが重要と考えた。そして,それによってどのような問題が引き起こされ,どのような対策が必要となるか議論する。また,実際の保育所の割当システムに注目し,どのようなシステムでは,どのようなインセンティブがあり,どのような問題が引き起こされる傾向にあるのかを考えたい。例えば,保育所の割当の際に,既存研究で多く議論されているような,あえて自分の最も通わせたい保育所を第一志望としない戦略の以外にも,保育所の優先順をあげるために,あえて所得を下げるような戦略をとる可能性もある。そのような戦略が実際にとられているかどうか調べたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大により,学会や研究会参加や研究打ち合わせの機会が限られたため。
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