2020 Fiscal Year Research-status Report
ファッション・デザインに関する産業財産権の法と経済分析
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19K01598
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
飯島 裕胤 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (70303039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家田 崇 南山大学, 法学部, 教授 (90319244)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ファッションライセンス契約 / ブランドの意味 / 衒示的消費の理論的基礎づけ / ファッションデザインにおける文化流用と差別表現 / 文化的モチーフの利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
①ファッションライセンス契約の理論的考察を通じて、契約の対象である「ブランド」の意味の再検討を行った。また、②ファッションデザインに関連する文化流用と差別表現の法的検証を行った。 令和元年度から2年度にかけて、日本のファッション産業で多くみられるライセンス生産について、その契約上の実務問題を整理していた。そして問題の理論的考察を行っていたのだが、その際、ライセンス契約の形態を考察することで、契約が対象とする「ブランド」というものを契約者がどうとらえているかを抽出できるのではないか、という研究上の方法論に気付いた。検討を進めた結果、従来、法と経済学の分野で理論的にとらえられてきたブランドの意味(質の表示などの機能)とは異なる理解に至った。古くヴェブレンが強調し、ファッションブランドの特徴でもある衒示的消費を、一部基礎づける結果である。 その理解にもとづき、ファッションライセンス契約の問題の本質を、技術ライセンスとの違いを明確にしつつ明らかにするとともに、日本のファッション産業におけるライセンスビジネスの転換のために、どのような方策が望ましいかを示した。 現在、この研究は執筆中である。 もう一つの研究は、ファッションデザインに関連する文化流用と差別表現が問題とされた事案を検証し、ファッションデザインがデザインした主体の意図に反して問題となる要因と、問題が発生した場合の対処方法を分析した。この検討によって、ファッションブランドが、文化流用や差別表現の問題を発生させることなく文化的モチーフなどをデザインに利用する際に留意しなければならない点を示した。 この研究は本年度公刊ずみである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り研究は順調に進捗している。令和元年度、2年度ともに関連研究を公刊し、また3年度に公刊すべき研究執筆も進んでいる。とくに、研究の当初の意図以上の展開があった点は、幸運な進展といえる。 一方で、本研究課題は海外でのヒアリング調査と研究報告を多く想定していたが、2年度は部分的にオンラインで代替したものの、そのパートの研究については今後の課題といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ファッションライセンス契約の理論的考察を通じた「ブランド」の意味の再検討については、研究結果を現在執筆中であるが、これを早急に完成させ公刊する。 ファッションの産業財産権において「ブランド」の理解は根幹であり、この部分の研究が進展したことで、さまざまな派生的な研究が可能になるはずである。その研究を進める。 なお、海外でのヒアリング調査については、当面オンラインで代替しつつ、年度後半での対面調査が可能か模索しているところである。
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Causes of Carryover |
感染症の世界的状況から、計画していた海外出張(ヒアリング調査)が事実上実施できず、そのために次年度使用額が生じたものである。現在、最終年度後半の実施の可否を模索しているところである。
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