2023 Fiscal Year Annual Research Report
Disaster impact analysis on natural resource market
Project/Area Number |
19K01623
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山本 雅資 東海大学, 政治経済学部, 教授 (30458947)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自然資源 / 大規模災害 / 漁業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大規模自然災害の自然資源価格へのインパクトを研究対象としているが、最終年度は東日本大震災発生時のインパクトではなく、2023年度に実施されたALPS(ALPS:Advanced Liquid Processing System)処理水の海洋放出が漁業資源の取引価格にどのようなインパクトを与えたかを分析した。
汚染水が溜まることは2011年の段階で既に課題として認識されており、将来的には放出が避けられないと見られていた。震災直後にも提案されたが何度か見送られた経緯がある。その後、2021年4月13日に国が安全性を確認した上で放出することが決まった。2023年の上半期には処理水の安全性が確認され、2023年8月24日にALPS処理水の第1回の放出が実施されている。本研究では8/24の放出前後において、漁業資源の卸売価格に影響があったかどうかを、Difference-in-Differencesを用いて分析した。トリートメント群としては福島県内の卸売データ、具体的にはデータが取得できたいわき漁協の日次データを用いた。また、コントロール群としては豊洲市場の日次データを使った。また、アナウンスの段階での効果も検証するため、2021年4月13日の前後についても同様の分析を行なった。
取引の平均的な価格をアウトカムと設定し、8/24の放出をトリートメントとした分析の結果、DID推定量が有意にマイナスの結果となった。ただし、この期間は1年の間でも最も魚の需要が高まるお盆の時期を挟んでいるため、ALPS処理水の影響であると断言することは難しい。実際、サンプル数を犠牲にして、トリートメント前の期間を短縮して、お盆期間を除いたところ、有意な結果は得られなかった。また、2021年4月のアナウンスメントについても特に有意な結果は得られなかった。
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