2021 Fiscal Year Research-status Report
将来世代にわたる災害の影響を減殺する生活再建政策に関する提言
Project/Area Number |
19K01629
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Research Institution | Onomichi City University |
Principal Investigator |
堀江 進也 尾道市立大学, 経済情報学部, 准教授 (50633468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入谷 純 大阪学院大学, 経済学部, 教授 (30107106)
藤井 隆雄 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80547216)
安岡 匡也 関西学院大学, 経済学部, 教授 (90437434)
土居 潤子 関西大学, 経済学部, 教授 (00367947)
佐藤 純恵 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (70623388)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生産関数の集計 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、賃金決定のDemand Sideたる企業の生産活動に災害が与える影響を見ることの重要性に着目した研究に活動が集中した。この中で、部門レベル(=ミクロレベル)の生産関数を1国レベル(=マクロレベル)生産関数へ集計することが、経済合理性の観点から整合的に行えるかを考察した。この分野は、60年代のケンブリッジ論争以来、集計化について否定的な見解が示されたままであるが、近年数少ない論文が新しい成果を示すのみにとどまっている。本プロジェクトでは、まず2部門経済で考察をスタートし、2生産部門をマクロレベルに集計可能であることを、示した。この成果は日本経済学会2021年大会の春季大会で報告した。現在学術雑誌に投稿中である。また、このモデルをn生産部門経済に拡張した場合においても、n生産部門を任意のサイズのサブグループに集計したとしても、それぞれのサブグループのマクロ生産関数へ集計し、さらにそれを経済全体のマクロ生産関数へと、合理性と整合的な形で集計できることを示した。この成果は、日本経済学会2021年度秋季大会で報告した。さらに、集計の仕方をやや複雑化し、生産部門を採取生産部門と中間生産部門の2種類にしたうえで、中間生産財を共有する2最終生産部門(=2つのサプライチェーン)を備える経済における、生産関数の集計化についても考察した(サプライチェーン経済の構築)。この結果、やはりミクロ生産関数からサプライチェーンの生産関数への集計化、さらにサプライチェーン生産関数からマクロ生産関数への集計、あるいはミクロ生産関数からマクロ生産関数への直接の集計のいずれもが可能であることを示すことができた。この結果を、日本経済学会2021年度秋季大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは、生産関数を構成する労働生産性が、労働者個人の能力(component ability)によっていかように決定されているかを明らかにし、これらcomponent abilityのうち災害によって影響されやすいものはいずれであるかを明らかにすることを目標としている。現在、component abilityの候補である、アンケート回答者の各種属性と、回答者が従事している職務のタスク(均衡においてタスク=能力であることを仮定)、さらにBIG5の分布の推定まで行っている。しかし、災害からの影響を受けやすいものの特定までには至っていない。そのため、やや進捗に遅れがあるとも考えられる。しかし、他方で企業の生産関数の内、労働生産性と補完関係にある資本労働生産性やTFPに対して災害が与えうる影響について、理論的な考察を大きく進めることができている。成果は、60年代から停滞していた議論について、大きな進展を与えるものである。また、成果の中でもサプライチェーン経済の構築についての議論に関しては、近年データサイエンス分野ではサプライチェーンネットワークの視覚化を含めた活発な議論を行われているものの、理論的には十分なサポートが欠落していることから、データサイエンスからの接近と、統的な産業連関分析との関係づけが未だ行われていない現状を鑑みると、非常に重要な成果が上がっていると考える。このため、プロジェクト全体の進捗としては、主目的の遅れを十分に補完できていると考え、進捗は「順調である」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本プロジェクトの最終年度に当たる。本年の研究は2つの柱を軸として進められる。第1の柱は、当初の計画のとおりmajor component abilityの特定を進めることにある。現在、component abilityの候補である、アンケート回答者の各種属性と、回答者が従事している職務のタスク(均衡においてタスク=能力であることを仮定)、さらにBIG5の分布の推定まで行っている。今後はこれをもとに年度末までに成果を論文の形に仕上げることを目標とする。第2の柱は、生産関数の集計の一般化である。一般化はさらに以下の細分化を伴う。 現在置いている生産関数の一時同次性の仮定をゆるめて、サプライチェーン経済の構築を行う。2.異なるサプライチェーン上の最終生産部門間に資本の異質性を導入する。3.サプライチェーン上の各生産部門のTFPあるいは資本制約について不確実性を導入する。以上をそれぞれ行い、かつ1と2と3を組み合わせて、各部門の生産関数とサプライチェーン生産関数、さらにマクロ生産関数が各レベル(部門・サプライチェーン)における利潤最大化と整合的であることを担保ながらより一般性の高いモデルを構築することを目標とする。ここでもっとも重要なステップは3であり、災害がTFPと資本制約を通じて生産に与える影響を精緻に把握することができる。これにより、本プロジェクトの主要な目標である、災害が人的資本(component abilities)を通じて生産に与える影響についての考察を、第1の柱とは別の視点から行うことを可能にする。ただし、不確実性の導入については、各部門が異なる不確実性に直面している(=異質な災害リスクに直面している)ことを表現する場合、異なる関数空間上に定義された関数を集計することが想定されるため、作業としてはやや困難を伴う可能性がある。
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Causes of Carryover |
コロナ禍よりセミナーや学会が対面開催でなかった、あるいは対面開催の場合でも、感染拡大防止の観点から本務校から出張を控える指示があったため、旅費目的で助成金を使用することが可能ではなかった。同様の理由から、研究打ち合わせを対面で行うことが可能ではなかった。2022年度は、この理由が解消されつつあることと、対面での打ち合わせの方が互いにより多くのアイデアを提示しあえるため、旅費目的の使用を活発に行う予定である。また、成果報告会のために尾道市立大学にてセミナーを開催する予定であるため、このときに関西・東海地区の大学に所属するチームメンバーを尾道市立大学まで招へいするための旅費としても使用予定している。なお、申請者が本研究の分析に使用しているPC(2015年より使用)が、2022年2月よりしばしば不調を示しているため、修理あるいは新しいPCの購入費にあてる可能性があることを付記する。その場合は、2022年度前半までに修理あるいは購入する。
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