2021 Fiscal Year Research-status Report
北欧におけるイノベーション政策の刷新とそのミクロ的基礎としての触媒組織・人材
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19K01650
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳丸 宜穂 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00387656)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イノベーション政策 / 触媒作用 / 産業構造転換 / 公共空間 / ミッション指向型イノベーション政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次のような研究を実施した. (1) 産業構造を常に刷新し,新しい産業・雇用を生み出すことは,新興諸国との競合関係が増大している先進諸国に共通する課題である.そこで,主導産業である携帯電話産業が急激に競争力を喪失したフィンランド・オウル地域で,いかなる公共政策とアクターの関与によって産業転換が実現したのか,また,それを支える社会経済制度の基盤はいかなるものだったのかを分析・考察することにより,いわゆる北欧モデルが新産業創出に対して有する含意について明らかにした.また,日本の産業転換事例と比較することで,日本にとっての課題についても論じた.この研究は査読を経て,学術雑誌に掲載される予定である. (2) 公共調達を戦略的に用いて需要側からイノベーションを刺激する政策である「イノベーションのための公共調達」政策では,地方自治体や産業振興公社などのいわゆる中間組織が,イノベーションを方向づける上で重要な触媒作用を果たすが,触媒作用の内実について,フィンランドにおける公共調達の事例研究に基づき分析・考察を行った.この研究は査読を経て,英文学術雑誌に掲載された. (3) 上記のような触媒作用が,公共調達によってイノベーションを刺激する上で重要な役割を演じているか否かを一般的に検証するために,フィンランド地方自治体向けに,公共調達に関する質問紙調査を実施した.その結果を定量的に分析し,触媒作用の内実と,それが発揮されるための社会ネットワーク上の条件について明らかにした.この研究は学会で発表され,目下のところ投稿論文として準備しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症の影響でフィンランドでの現地調査が全く出来ていない.対象をよく知るために,現地での視察とそこでのやり取りが必要なフェーズであるため,オンラインでの聞き取り調査で済ますことが出来ないと考えている.そのためにやむを得ず研究計画を遅延させざるを得なかった.その代わり,手持ちの資料での成果発表を優先して行うことにした.
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症,ウクライナ戦争などの問題が引き続き存在するものの,感染症が下火になっていると見込まれる今夏には渡航し,先送りにしている,地方自治体や産業振興公社に対する組織単位での聞き取り調査を急いで実施する.同時に,それら組織に属する触媒人材に対する個人単位での聞き取り調査を前倒しで実施する.
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Causes of Carryover |
コロナ感染症のために,現地調査を目的とした渡航が2年間出来ていない.そのために次年度使用額が累積してしまっている.2022年度には可能な限り渡航し,集約的に聞き取り調査を実施する予定である.また,同様に遅延している質問紙調査についても,聞き取り調査の結果を踏まえて企画・調査票作成を急ぐ.
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