2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01671
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
青木 周平 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (00584070)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 投資信託 / 金融の成長 / 経済格差 / 大分岐 / 産業革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績は、以下の2つからなる。 1. 本研究の第1の目的は、研究代表者らが以前開発した異質的な家計と企業からなる動学的一般均衡モデルに、(1) ハイリスク・ハイリターンの個別株、(2) ミドルリスク・ミドルリターンの投資信託、(3) ローリスク・ローリターンの安全資産の3つの資産が存在し、家計が最適ポートフォリオ選択を行う設定を組み入れた理論モデルを開発することである。2020年度に開発した理論モデルでは、個別企業への生産性ショックのみ考慮していた。この点について、経済全体に影響するショックも考慮してモデルを構築する必要があるのではないかという指摘を受けたため、2021年度は、経済全体に影響するショックが存在する修正版の理論モデルを構築した。
2. 本研究の第2の目的は、長期の所得・資産格差についての要因・メカニズムを経済学的に明らかにすることである。2021年度は、この点について、大分岐の問題に焦点をあてて研究を行った。大分岐とは、産業革命以前はイギリスと中国で経済の発展レベルが同水準であったものが、1800年前後を境に、両国の間で経済成長の点で大きな格差が生まれたことを指す。経済史家のPomeranzは、この大分岐の問題に着目し著名な研究を行っている。Pomeranzによれば、大分岐の原因は、イギリスには石炭や新大陸からの農作物の輸入があり中国にはそれらがなかったことにあると主張している。しかし、Pomeranzは、これらが具体的にどのようなメカニズムにより大分岐を引き起こしたかについて、明確な説明をしていない。この点を経済学的に明らかにするため、本研究では、2021年度にPomeranzの仮説を経済学的に記述した理論モデルを構築し論文としてまとめた。さらに東北大学と大阪大学で本研究の研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で説明した1の研究に関しては、偏微分方程式を数値計算する部分が難しいためその作業は2022年度に持ち越されたが、それ以外の部分については、作業を進捗させている。「研究実績の概要」で説明した2の研究に関しては、完成した論文の研究報告を行っているなど進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で説明した1の研究に関しては、モデルを定量的に分析するためには、偏微分方程式を数値計算を行う必要がある。2022年度はこの点に関して取り組み、研究結果を論文の形で完成させる予定である。「研究実績の概要」で説明した2の研究に関しては、2022年度中にさらに研究報告を行い、研究内容に関するコメントをもらい反映させた上で、学術雑誌に投稿する予定である。
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