2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01685
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
上山 仁恵 名古屋学院大学, 経済学部, 准教授 (90295618)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 少額投資非課税制度 / NISA / 家計 / 個人投資家 / 資産選択 / ポートフォリオ分析 / 証券市場 / 証券投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2014年1月からスタートした少額投資非課税制度(通称NISA)による日本人の資産選択の行動に与える政策効果を検証することである。具体的な分析内容は、1)NISAにより新規の投資家を増やしたのか(証券市場への参入効果に対する検証)、及び、2)NISAは新規投資家を育てたのか(証券市場参入後の行動分析)、の2点について明らかにすることである。特に、現在半数近いNISAの口座が休眠口座となっており(2020年9月末現在、一般NISAの稼働率は59.9%、つみたてNISAは60.3%)、その原因を明らかにすることは政策課題として重要な意義を持つ。 以上の研究概要を念頭に、2020年度は本研究の目的を達成するため、一般消費者を対象にNISAに関する調査(web調査)を実施した。この調査は、以下の2つの点で既存調査には無い独自の視点(内容)を含む調査である。 まず1点目は、調査対象をNISA制度開始前から投資を行っている既存投資家と、NISAを機に証券口座を開設した新規投資家を区別して調査した点である。NISAに関する既存の調査ではこれらの区別がなされていないため、NISAによる証券市場への参入効果の検証は先行研究では行われていない。そして2点目は、NISAを機に証券口座を開設したにも関わらず投資を開始していないサンプルを確保した点である。本研究で実施した調査により、既存研究では明らかにされていないNISAによる一般消費者に与えた影響が分析可能となっている。 この調査の単純集計は名古屋学院大学総合研究所ディスカッションペーパー(「少額投資非課税制度(通称 NISA)に関する調査(2020 年実施)」集計結果)で公表している。2021年度は、以上の調査データを用い、計量分析を行った結果を論文としてまとめ、学会・研究会等で公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は本研究の目的を達成するための調査を実施し、その結果(単純集計)をディスカッションペーパーにまとめて公表したが、当初予定していた実証研究の結果論文の発表(及び学会誌への投稿)が実施できなかった。 その理由としては、2020年度に「社会保障研究」(国立社会保障・人口問題研究所定期刊行誌)、及び「住宅金融」(住宅金融支援機構広報誌)へのリバース・モーゲージに関する依頼論文の執筆作業に時間が取られたためである。 もちろんリバース・モーゲージの研究は家計の資産選択の研究(ポートフォリオ分析)のため、本研究と関連性を持つ研究内容であるが、本研究の目的であるNISAの実証研究の論文公表ができなかったため「(3)やや遅れている。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に実施したNISAに関する調査データを用い、計量分析した結果を論文としてまとめ、学会報告及び学会誌への投稿を行う。 なお、当初の研究計画では2021年度に高齢者に対するNISAの郵送調査、及び、2022年度に、つみたてNISAとジュニアNISAに関する分析を行う予定であった。 しかし、2020年度に実施した調査でつみたてNISAについても同時に調査を行うことができた。また、2020年度の税制改正において金融庁はジュニアNISAを2023年の口座開設で廃止することを決定したため、ジュニアNISAについては分析の対象から除外することにした。 一方で、新型コロナウイルスによる外出規制の影響から個人投資家(特に若い層での証券投資)が増加傾向にある。 以上を踏まえ、2021年度と2022年度については、当初の研究計画を変更し、新型コロナウイルスの影響による消費者の投資行動の変化(NISA利用に与える影響)について分析する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として375,530円が生じた理由は、2020年度に実施したweb調査の合計金額が1,595,000円であり、2020年度予算である1,585,530円を超えてしまったためである。 ちなみに、調査実施費用が当初の予算を超えた理由は、本研究の調査がNISAを機に証券口座を開設した人、及び、NISA口座を運用していない人とサンプル回収が複雑であり、事前に出現率等の調査の実施でスクリーニング調査に費用がかかったことが原因となっている。 従って、web調査の請求額を、スクリーニング調査(385,000円)と本調査(1,210,000円)に分け、スクリーニング調査費用は大学の個人研究費で、本調査を科学研究費で計上したため、2020年度内ではスクリーニング調査に該当する費用が未使用額となった。 2021年度の研究計画では、新型コロナウイルスの影響が消費者の投資行動に与える影響についてweb調査を行うため、2020年度の未使用額は2021年度の助成金と合わせて調査の委託費に計上する予定である。
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