2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01685
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
上山 仁恵 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (90295618)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 少額投資非課税制度 / つみたてNISA / 若年層 / 個人投資家 / 売却行動 / ポートフォリオ / 流動性資産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2014年1月からスタートした少額投資非課税制度(通称NISA)による国民の投資行動に与える政策効果について、特に金融リテラシーの影響に注目して実証分析を行うことである。 2024年度(最終年度)では、昨今、若年層のつみたてNISAの利用が急増していることを背景に、20代のつみたてNISAの利用行動について独自でアンケート調査を実施した。なお、つみたてNISAは長期投資を念頭においた金融商品であるにもかかわらず、20代の売却率が高くなっているため、NISAの売却行動に注目して実証分析を行った。 その結果、NISAを売却する理由としては、現金の必要性が主な理由であり、そのような人には、貯蓄行動としてNISAだけしかしていない人(その他、預貯金等の流動性資産の貯蓄や積立を行っていない)、あるいは、十分な預貯金の確保ができていない人が有意に多いことが判明した。そして、該当者には金融リテラシーの有意な低さが確認された。 政府や金融機関等によるNISAの宣伝・広報を背景にNISAの認知度が広がり、NISAの利用が増加しているが、若年層は貯蓄にまわせる資金が少なく、NISAのみしか貯蓄ができない(あるいは、NISAだけやっていれば大丈夫と思っている)人も少なくはない。さらに、2024年1月からスタートした新NISAでは年間投資上限額が大幅に増加したため、NISAだけしか貯蓄手段を持たない若者の増加も懸念される。NISAはあくまでリスク性資産であるため、NISAと同時に預貯金等の安全資産(流動性資産)の確保が必要である。そのことを周知しながらNISAの利用を推奨していくことが問われている。 上記の研究成果については、2023年9月に開催された証券経済学会全国大会にて報告し、2024年3月に、論文としてゆうちょ財団の研究論文集に公表した。
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