2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01710
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
町北 朋洋 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (70377042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 雇用の非正規化 / 外国人労働力 / 国際貿易 / 国際生産網 / アウトソーシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、日本の雇用の非正規化に与える外国人労働力の受入れの影響について、地域労働市場の視点から理論・実証分析を行うものである。雇用の非正規化は需要変動への調整を柔軟にする企業レベルのメリットがある一方で、外国人労働力の導入の影響によってさらに雇用の非正規化が進展すれば、地域雇用の非正規化が更に進展する可能性がある。産業立地は地域毎に不均一であるため、こうした影響は地域労働市場毎に大きく異なるだろう。本研究では、こうした問題意識を背景に、経済のグローバル化(製品市場の国際競争激化、海外業務委託の拡大、外国人労働力へのアクセス拡大)に伴う企業の雇用形態の見直しが地域雇用の非正規化にいかなる影響を与えるかを数量的に示すことを目的としている。 2020年度の研究実績として、外国人労働力の導入について、公表統計を用いたデータ収集と、その地理的ばらつきについての分析を集中的に進めた。具体的には次の2点を行った。第一に、厚生労働省が収集している『「外国人雇用状況」の届出状況表』(平成20年から令和 元年)および『外国人雇用状況報告』(平成5年から平成18年)の都道府県別集計を用いて、外国人労働力の需要に関する地域差を、外国人を雇用する産業特性と在留資格に注目しながら示した。さらに、その産業特性と在留資格の組み合わせの地域差が時間を追うごとに収斂するか、それとも発散するかを示した。第二に、地域雇用の密度に注目し、外国人雇用者数の密度が高い県と低い県の間では、産業の地域特化度にどのような差が生じるのかを検出する作業を行なった。より具体的には、外国人雇用者密度の高い地域は、貿易財と非貿易財のどちらに集中し、非貿易財の中でも、新技術を集約的に使用する産業に集中するのかを問うた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた外国人労働需要の地域差、その推移に関するデータ収集と分析を集中的に進めることができたため、これをもとに、2021年度の実証・理論分析、さらにデータの改訂・更新作業を順次進める準備ができた。本研究課題では、日本人と外国人の間の職務の代替・補完関係の変化に伴う雇用構成変化がどの程度の空間的な広がりを持つかを考察することを目的とするが、2020年度の研究実績を通じて、2021年度に向けて、次の三つの課題が浮かび上がってきた。第一に、国際生産網の各工程を担う企業が非正規雇用と正規雇用の区分をどのように決め、そうした工程をいくつ有するのかを記述する必要があること。第二に、その上で外国人労働力へのアクセス拡大という地域経済環境の変化、可能性を扱う必要があること。最後に、より調整費用の柔軟な労働力供給を前にして、企業はどれほどの雇用を一時的な非正規雇用として扱いつつ、どれほどの労働力を期間の定めのない正規雇用として企業内に労働保蔵するかを記述する必要があること。こうした、2020年度までのデータ分析を踏まえ、経済のグローバル化の進展下での雇用調整、雇用区分の複線化の在り方を2021年度に検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究実績の中には含めることができなかったものの、2020年度末までに、これらのデータ収集・分析を踏まえ、外国人労働力のタイプと産業特性のマッチングのあり方を説明しうる理論モデルの作成を開始した。今後、2021年度は、この理論モデルの作成を通じ、企業の雇用区分の設定行動をより理論的に明らかにすることができ、それは外国人労働力の導入が産業の「温存効果」をもつとしたらどのような時か、地域雇用の非正規化をもたらすとしたらどのような場合かの考察に資する。
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Causes of Carryover |
2020年度の旅費使用計画を中止したため、2021年度の旅費使用を模索していたが、これも計画を取りやめ、2021年度に人件費・謝金請求および物品費請求を希望している。
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