2020 Fiscal Year Research-status Report
緊縮政策と自殺・死亡―1930年代と50年代の地方財政緊縮の社会的影響の因果分析
Project/Area Number |
19K01723
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
古市 将人 帝京大学, 経済学部, 准教授 (50611521)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 道人 立教大学, 経済学部, 准教授 (10749162)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 道府県別自殺統計 / 歴史的パネルデータの分析 / 地方財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基本的な目的は、戦前と戦後の財政支出の変化が自殺率や死亡率に与える効果を検証することである。本年度は、分析用のデータの整備、先行研究の検討、基礎分析を行った。 具体的には、戦前の道府県の財政支出と自殺率データを用いた分析を行った。まず、研究計画に記載した戦前の2つの財政上の変化(井上財政と高橋財政)に注目をした。先行研究や当時の歴史状況を調査した上で、比較的分析の容易な高橋財政期の財政支出に注目をした。分析に使用可能な処置変数の定式化について、分担者と協議を重ねた。この時期の地方財政支出の変化を用いて、財政支出が道府県レベルのアウトカムに与える効果を標準的なdynamic difference-in-differenceで分析した。分析の結果、財政支出の変化が道府県の自殺率に影響を与える可能性を確認した。 次に、このベースラインとなる分析結果の頑健性を確認するための追加分析や先行研究の検討を行った。前者については、共変量を用いた分析などの追加分析を実施した。その結果、基本的な分析結果がある程度維持されることを確認した。ただし、分析には改善の余地があるため、今後の課題とその対処方法を検討した。具体的には、本分析の頑健性のさらなる確認や財政支出がアウトカムに与える効果の異質性の検証を実施するためには、追加の共変量が必要になることを確認した。 次に、戦前と戦後の統計資料の調査と先行研究の検討を行った。特に、アウトカムとなる自殺統計に関する当時の論文、自殺率の決定要因に関する研究や大恐慌期の研究を収集し、それらを検討した。 以上の結果を踏まえて、分析結果を研究会などで報告するための準備を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基本的な処置変数の検討とそれがアウトカムに与える効果の検証については、戦前データを使った基本的分析を終えた。分析の頑健性のチェックについても、現在可能な手法を一通り試している。この分析を論文にまとめるにあたって、さらなる資料の収集とデータ整備が必要である。ただし、2020年度に発生した新型コロナウイルスに伴う大学業務量の増加によって、予定していた作業に遅れが生じている。特に、追加分析に必要な統計資料の収集とデータ入力の業者への発注に遅れが生じている。そのため、この点は年度内に作業を終えることができなかった。ただし、年度内から新年度にかけて、資料の精選と整備の作業を行った。戦前の分析に関するデータ整備に関する基本的な作業は終えており、2021年5月に業者に見積依頼を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、最終研究期間となる。残された研究の遂行と分析結果を論文にまとめる作業を行う。これまでの研究成果を学会にて報告する予定である。学会報告に必要な基礎的な分析はすでに終えている。現在、各種の学会や研究会などで、研究代表者と分担者が本研究の成果を報告する準備を進めている。次に、以上の研究報告を踏まえて、研究成果を論文にまとめる。その論文を学術誌に投稿できる水準にまで、論文の完成度を高めるのが本年度の基本的な目標である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、作業の遅れに伴って予定していたデータ整備費用を使用しなかったことにある。当初、基本的な分析を終わらせた後に、統計整備の作業を進める予定であった。しかし、新型コロナウィルスの流行に伴う大学業務の変化と業務量の増大などに対応するため、研究時間を十分に確保することができなかった。そのため、基本的な分析の実施に当初より時間を要することになった。また、上記の理由によって、資料の収集とデータの整備の作業にも遅れが生じた。ただし、2021年5月段階で、データ入力の外注作業の見積を業者に依頼をしている。つまり、2年目の研究計画で使用予定だった金額の一部については、具体的な執行の予定がある。残された金額も、基本的には2年目に使用予定だった作業に使用する。具体的には、資料の購入、追加分析に必要なデータ収集と整備、論文執筆や論文投稿に、次年度使用額を使用する予定である。
|