2022 Fiscal Year Annual Research Report
金融危機の波及と金融センターの頑健性・脆弱性:ネットワーク理論適用と比較史的分析
Project/Area Number |
19K01774
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 歩 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (10374886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 秀直 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00633950)
古賀 大介 山口大学, 大学院東アジア研究科, 教授 (50345857)
布田 功治 亜細亜大学, 経済学部, 講師 (70609370)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金融センター / 国際金融センター / 銀行ネットワーク / コルレス・ネットワーク / 金融危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もアメリカに関する研究が菅原研究室の大学院生である木村雄太氏によって進められた。その焦点は、金融危機の波及に関して、アメリカの3層構造の銀行コルレス・ネットワークにおいて「周辺→中心」という波及はあったのかどうかということである。アメリカの3層行動では、第1階層が中央準備都市であり、これはニューヨーク市とシカゴ市のみが該当する。第2階層は準備都市である。第3階層はそれ以外のすべての場所であり、地方の小規模銀行群が立地している。第3階層→第2階層への波及はあった。第2階層から第1階層への波及はなかった。むしろ、第1階層であるニューヨークとシカゴの最大規模の銀行では破綻は生じていない。第1階層=アメリカの最大規模の金融センターは、金融危機の波及を食い止める機能を果たしていた。これと、1931年のヨーロッパの銀行危機の際にもロンドンの最大規模の商業銀行はいずれも破綻せず経営危機に陥ることもなかったことと併せて考えると、ニューヨーク、シカゴ、ロンドンという最大規模の金融センター(このうちニューヨークとロンドンは世界の2大国際金融センター)は、1930年代の金融危機において、危機の波及の経路となったのではなく、むしろ危機の波及を食い止める機能を果たしていたことが分かった。ではなぜこのようなことが生じたのか。第1に考えられる仮説は、中央銀行による金融支援が金融センターの最大規模の銀行に集中的に向けられたのではないか、というものである。この仮説は、アメリカで第2階層、第3階層では極めて多数の銀行破綻が生じていたこととも整合的である。アメリカでは、1933年以前には、金本位制のもとでの中央銀行の限定された資源が、銀行ネットワークの結節点に集中的に投じられたと考えることができる。
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Research Products
(8 results)