2023 Fiscal Year Annual Research Report
産業地域における制度的文脈の形成・変容過程に関する国際比較研究
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19K01828
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
相原 基大 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (40336144)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 制度的文脈 / 産業地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は次の2つの調査研究を遂行した.第1に,Covid19の流行の影響により完遂できていなかった実地調査を継続し,高い信頼性と完備性を備えたデータベースの構築を最優先に進めた.既に一次的な分析結果をとりまとめた木製インテリア製造業に従事する国内の産業地域群に関しては,主に競合する同業他地域に現存する資料等を集め,国内家具製造業を取り巻くタスク環境の変化を捕捉し,分析精度の向上をはかった.木製インテリア製造業に従事する欧州の産業地域に関して,現地資料の収集と関係者へのヒアリングを実施し,同業に従事する国内の産業地域の経験と対照するとともに,欧州家具業界のビジネス展開が国内の家具業界,産業地域の制度的文脈に与える影響の分析を試みた.第2に,産業地域における制度的文脈の形成・変容過程に関する国際比較をすすめ,総合的な考察を試みた.比較分析を進める過程で,過年度に構築した概念枠に備わる限界を検知し,修正を重ねた.木製インテリア製造業に従事する産業地域の国際比較では,既往の先行研究で見落とされてきた各国および各地の研究教育機関の働きを視野に含め,制度的文脈の形成・変容過程を捉える重要性が浮き彫りになった.眼鏡枠製造業に従事する産業地域の国際比較では,眼鏡ビジネスがグローバルに推移していく歴史的な過程で,それぞれの産業地域における制度的文脈が,眼鏡ビジネスの世界的な展開,すなわち眼鏡枠企画・製造業のみならず,流通業における新業態の生成・成長やブランドコングロマリットの成立等のタスク環境の変化と長期にわたり累積的に結びつき変容する,複雑な因果的過程を捉えることが求められた.現在,業界の漸進的な展開のもとで国内外の産業地域群で生起する事象が直接,間接に結びつきながら,各地域に固有な制度的文脈の形成・変容過程を統合的に説明する概念枠の改訂を繰り返し,最終的な研究成果をとりまとめている.
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