2019 Fiscal Year Research-status Report
育児休業を取得して働く女性の基幹人材化に関する個人の意識変化と職場要因の研究
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19K01864
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
国保 祥子 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (90595688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 克仁 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (60509157)
玉利 祐樹 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (60737360)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 働く女性の基幹人材化 / ワークライフバランス / 働き方 / 多元的人材管理 / 育児休業制度 / 女性の昇進意欲 / 人材育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、子を持って働く女性の基幹人材化に関する個人の意識変化プロセスと職場要因について明らかにすることを目的としている。人材不足が到来する今後の我が国においては多様な人材の活用は喫緊の課題であり、出産を機に離職することが多い女性は潜在的な戦力として期待されている。この研究課題は人的資源管理、労働経済学や働き方改革、ワークライフバランス研究の領域で扱われているが、これらは概ね就業継続に主眼が置かれており、基幹人材化、すなわち就業継続に留まらず経営に資する存在としての人材開発や職場管理という観点が弱い。多様化の恩恵として組織の生産性を高めるためには、全ての人材を基幹的社員として活用できる「多元的人材管理」(今野,2012)が必要だが、メンバーシップ型雇用(濱口,2009)や、職務内容・勤務地・労働時間に対する「無限定性」(筒井,2015)を特性とする日本企業においては、こうした視点での職場や人材の管理はあまり重視されてこなかった。だが女性は男性に比べ、上司をはじめとする職場要因が昇進意欲に影響を与えることが分かっており(武石2014、高村2017等)、本人の意識のみならず上司の管理行動のような職場要因を併せて分析する必要がある。そのため本研究では、人的資源管理領域と組織行動論領域を横断的に分析する。
2019年は2017年度から実施してきた研究プロジェクトのデータ収集が一段落し、現在論文執筆中である。これまでの研究成果としては、査読論文を1本、本テーマに関する一般雑誌への論説掲載3件を発表した。また地方紙での週間連載や、全国紙でのインタビュー掲載1回を通じて、課題の社会的認知の向上にも務めている。また2020年1月より、研究協力企業を中心に研究会を2回主宰した。研究会はCovid-19の影響で、2回目からはオンラインでの開催となっているが、2021年度も継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年から実施している実証研究プロジェクト「育休トランジション支援研究」については、2019年にデータの収集を終え、現在は論文を共同執筆中である。また査読論文1本、一般雑誌への投稿3件、新聞連載12回、全国紙掲載1回を通じて社会的認知向上をはかった。また研究会についても2回開催した。
当初の計画の1つであった子を持ちながら働く女性当事者への意識調査については、当初の予定より遅れている。その理由として、本調査は女性の意識変化に影響を与える職場要因について明らかにするために当事者の意識に加え、客観評価や管理職向けの意識調査などが必要で企業の協力が必須となる。これまでの研究ネットワークより2社ほど協力を得られる予定であったが、打ち合わせを進めていく中で人事情報のような機密データの提供をいただくことは難しいことが判明したり、担当者の異動があったりで、いったん白紙となりかけた。しかしその後同社の別部署において研究協力をえられることとなり、2020年度に調査を予定している。
もう1つは、子を持ちながら働く女性の上司にあたる社員(管理職)の意識調査である。女性の活躍を妨げる、または促進する要素を説明する研修プログラムに管理職に参加していただき、そこでどのような意識変革と行動変容が管理職にもたらされるかを調査する予定である。こちらは2020年5月に実施予定で準備を進めていたが、Covid-19によって集合型の研修を実施することが難しくなった。現在研修プログラムの実施は中止ではないが、計画より遅延する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年は、まず2017年から実施している実証研究プロジェクト「育休トランジション支援研究」についての論文を投稿する予定である。また一般雑誌を通じた社会的認知向上は引き続き実施する。 当初の計画の1つであった子を持ちながら働く女性当事者への意識調査については、2020年6月から開始する予定である。ただしこちらはデータ収集完了が早くても2021年となる見込みであり、その後分析して論文執筆予定です。 子を持ちながら働く女性の上司(管理職)の意識調査については、こちらは2020年5月に実施予定で準備を進めていたが、Covid-19によって集合型の研修を実施することが難しくなった。現時点でも調査の起点となるワークショップの実施時期の見通しが立たない。Covid-19によって協力企業の優先課題に変更があり、実施できない可能性もゼロではない。オンライン・ワークショップへの切り替えも検討しているが、企業側のネットワーク環境や態度から、簡単に切り替えることは難しく、現時点で中止にはなっていないが遅延する予定である。いずれにせよ集合研修が可能になる時期に依存する。2020年度は研究会を引き続き開催し、研究協力企業を探す予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は学内研究費が潤沢であったこと、また年度末にかけてCovid-19の影響で調査出張や研究会、ワークショップがキャンセルされたことから、予定を下回る出費となった。
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