2021 Fiscal Year Research-status Report
study on psychological mechanism of creativity and psychological capital
Project/Area Number |
19K01914
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
開本 浩矢 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90275298)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
井川 浩輔 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (80433093)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 心理的資本 / 創造性 / 感情労働 / 職務の埋め込み / 自己効力感 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は研究実施計画に従って、おもに心理的資本および創造性に関する先行研究や関連研究を渉猟するとともに、定量調査を実施するなどその概念の実証研究を行った。くわえて、調査協力してくれた民間企業と連携して、2020年度の研究成果である心理的資本の書籍に関連したセミナーを複数回実施した。近年、ワークエンゲージメントや心理的安全性といった心理的資本と類似し、関連の深い概念が経営実務にも応用されつつあるが、それらの概念と心理的資本との類似性と異質性に関して、実務家からの関心の高さを感じた。また、セミナーなどでの実務家との議論により、心理的資本の実務的インプリケーションの高さを改めて確認できたとともに、単純な翻訳による測定尺度での測定が実務上困難であることも認識できた。我が国独自の測定尺度または、我が国の組織文化に合致した測定尺度の開発が必要であることが示唆される。 こうした背景から民間企業と連携して心理的資本の定量的な測定を継続して行った。定量調査にあたり、心理的資本を規定する先行要因と心理的資本の結果変数となる後続要因をモデル化して定量調査の設計を行った。先行研究のレビューに基づき、先行要因として想定した上司との関係性(LMX)や職場の雰囲気といった環境要因が有意に心理的資本の各要素を高めていることも確認できた。心理的資本の後続要因として想定したワークエンゲージメントなどの成果変数が心理的資本によって有意に促進されることも検証された。 さらに、心理的資本の介入施策についてもいくつかの試行が行なわれた。今後の分析により詳細な結果が明らかになると予想するが、チームでの相互作用が心理的資本を向上させることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、民間企業と連携し、心理的資本概念に関するセミナーなどを複数回実施できた。また、民間企業と連携し、心理的資本の先行要因や後続要因に関して定量的な調査を実施することができた。とくに後者については複数の民間企業との連携を図ることができたため、調査データの蓄積がなされたことは、当初の計画で想定した範囲のものであった。 くわえて、心理的資本などの先行研究のレビューについても継続的に行っている。 一方で、調査データの蓄積が順調に展開されたこともあり、収集されたデータの分析という点では今後の進展が望まれる部分もある。もちろん、こうした分析すべきデータが蓄積されるという状況は、当初の研究計画において想定されたものであるため、その点をもって研究計画の進捗がネガティブであると判断するものではない。 以上から、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度の課題とした心理的資本の定量調査を実施して、心理的資本尺度に関する定量データを収集した。すでに一部のデータは分析することで、心理的資本尺度の妥当性はある程度検証できたと考える。その成果はすでに学会報告などで公表している。また先行研究レビューの整理に関しても、当初の計画以上の成果が得られたため、書籍として出版することとなった。以上から研究計画の当初3年間は順調に研究計画が進捗したといえる。 2022年度は本研究計画の最終年度である。前年度を中心に収集した定量データを用いた、多変量解析を行うことで、心理的資本尺度の妥当性にとどまらないエビデンスを提示したいと考える。特に、心理的資本の先行要因を探索するとともに、その後続変数との関係性を定量的に検証したいと考えている。どのような要因が心理的資本を高める(弱める)のかという規定要因を明らかにするだけでなく、心理的要因がどのような結果変数に影響を及ぼすのかを明らかにすることが求められる。これらが明らかになれば、心理的資本をめぐる分析モデルが提示できると考える。 加えて、心理的資本の分析モデルの妥当性を定量分析によって検証することは、心理的資本という概念の理論的妥当性だけでなく、実務的有用性を示すうえで重要であると考える。実務的有用性を示すことができれば、人材開発の現場において、心理的資本を応用・活用した介入施策への有益な示唆が得られると予想される。
|
Causes of Carryover |
2021年度も引き続き、コロナ禍のため旅費の執行ができなかったこと、またオンラインでのインタビューなど調査手法がより低費用となったことから使用額に残額が出た。次年度に合算して調査分析のための謝金などに使用する予定である。
|