2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of relationship between insight and dialogue process in design-driven innovation
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19K01974
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 学 日本大学, 商学部, 教授 (80411685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | デザイン / デザイン・ドリブン / イノベーション / 実験行動 / 相互作用 / 対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
デザイン・ドリブン型イノベーションのメカニズムを探るため、次のような活動を行った。本研究の「問い」である、言語、非言語表現を通じた「リフレクティブ・カンバセーション」を積極的に行うことが、インサイトの創造を通じた、問題発見と問題解決の同時性(Von Hippel and Von Krogh 2016、石井1993,2009)を促進させる可能性について具体的なイノベーション事例に対する情報収集とその資料化を行った。その上で、本研究の考察視点である開発者とユーザーおよび、開発者内部における相互作用の観点で追加調査ならびに資料化、考察を行った。その上で、デザイン・ドリブン型イノベーションについて、開発プロセスの調査ならびに調査結果の考察を実施した。開発者の行動を、デザインプロセスの段階別の視点、段階の相互関連の視点の2つの観点からデータを集計し、それぞれの観点から考察をした。具体的には、デザイン・ドリブン型イノベーションの事例として、市場創造につなげた、消費財製品分野(3製品のイノベーションプロセス)、サービス分野(3サービスのイノベーションプロセス)について調査を実施した。その調査をもとに、①問題を創造的に発見するプロセスと、②問題と解決の同時性の視点から、共感プロセスにおけるプロトタイピングの影響、実験行動を通じたピボットの発生について考察を実施した。また調査、考察の過程において、共同研究者とは、調査設計、調査結果の考察について意見交換を実施した。 その成果の1つとして、デザイン・ドリブン型製品、サービス開発の選定と担当者のインタビューの実施。調査結果を基にした、ピボット(変曲点)のタイプ分類とデザインのダブルダイヤモンドモデルとの関連について「ピボット(行動変曲)チェーン」(ピボットの連鎖)と開放型と閉鎖型の2つのピボットモデルを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、理論研究、比較事例研究、モデル構築について報告する。 理論研究は、デザイナーの2つの行動である、①行動とそれに伴う言語表現、非言語表現の2つの表現に関する理論上の課題を文献調査により確認した。②表現行動の相互作用による問題発見と問題解決を同時的に行う行動に関する理論上の課題を明らかにした。 比較事例研究では、問題発見と解決の同時性(インサイト)と相互作用に関する認知科学的視点による考察を、カシオG-SHOCKのファーストモデル製品の開発者の試行錯誤行動、デジタル補聴器開発者の試行錯誤行動についてインタビュー、文献によって調査を行った。デジタル補聴器については医療機器認可レギュレーションの承認を受けない選択に至る経緯と、その選択が新たな価値創造につながったプロセスを重点的に調査した。この調査には難聴者に対する非営利法人をユーザーとの対話形成の観点から調査を完了している。 モデル構築では理論研究、比較事例研究をもとに、開発者の状況、製品使用環境、開発プロセス初期段階における創造的瞬間(インサイト)と相互作用(「リフレクティブ・カンバセーション」)との関係について、行動の変曲点(Pivot)の観点から分析、考察を行った。相互作用特性、インサイトとの関係を明らかにするモデルとして、2つのピボットタイプの存在を明らかにした。 研究成果は、国内学術論文4本、海外学術論文2本、国内学会報告3回、海外学会報告2回を行い、コメント、フィードバックを得た。また、共編者として2冊の書籍出版を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の成果をもとに、2020年度は、デザイン・ドリブン型開発の組織導入、普及に関する調査ならびに、実験行動における対話と相互作用の観点から調査を実施する。 具体的には、創造性の問題に対して、以下の2つの観点から取り組む。すなわち、①創造性につながる試行錯誤および実験的行動とインサイトにつながるプロセスを、リフレクティブ・カンバセーション(認知と表現との相互作用)視点の視点から明らかにする。②その実現に向けてマーケティング、イノベーションに加えてデザイン、認知科学の分野の知見を加えて明らかにする。①については、比較事例研究としてイノベーターの行動プロセスを調査、記述し、プロセスにについて2019年度の成果の1つであるピボット(Pivot)に注目しその前後の行動について特に注目して考察を行い、モデル化を進める。②については、デザイン研究、建築研究、認知科学研究の領域の知見を援用するため文献調査を継続する。当初予定をしていた、③小規模な実証実験を通じてモデルの実践活用の可能性を探るサブテーマは、新型コロナウィルス拡大によって所属研究機関が閉鎖されているため、解除の状況をみながら研究を進める。また、同理由により、①の調査についても企業担当者へのインタビュー調査が難しい場合は、オンラインインタビューなどの方法に切り替える。また学会報告についても報告機会が限定される可能性があるため、分担研究者と密接に連携し、オンライン報告の機会やオンライン研究会を自ら主宰し(日本マーケティング学会デザイン思考研究会、所属大学の学部横断研究プラットフォームであるMarketing Design X Lab.での実施)成果の中間報告、成果に対するフィードバック機会の確保に努める。
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Causes of Carryover |
令和2年3月初旬に予定していた、米国への調査出張ならびに、スタンフォード大学Center of design research チームとの打合せが、新型コロナウィルス拡大に伴い渡航が困難となった。そのため支出予定であった旅費約30万円の執行ができなかった。海外研究メンバーとの研究会実施ならびに国際学会、国内学会がオンライン開催に代わる可能性がある。また 調査もオンラインへの比重が高くなると予想される。そのため機材整備ならびに電子会議システムの導入整備を行う。国内外の活動解除状況確認し、国内、海外の出張環境が整い次第、調査、報告出張が計画に基づき実施できるように準備を進める。
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Research Products
(12 results)