2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of relationship between insight and dialogue process in design-driven innovation
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19K01974
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 学 日本大学, 商学部, 教授 (80411685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | デザイン / イノベーション / 対話 / プロトタイプ / リフレクティブ・カンバセーション / 相互作用 / 人間中心 / 価値創造 |
Outline of Annual Research Achievements |
デザイン・ドリブン型のイノベーションは「人間中心デザイン」(Norman 2013)の行動によって支えられている。そして良いデザインに向けた重要な原則は、「問題を特定することを避け、暫定的なデザインを繰り返すこと」(Norman 2013)である。つまり実験的行動(Dyer and Christensen,et al.2011)を繰り返すことにある。実験的行動において重要なことは、問題を明確に定めることができない状況でも行動を繰り返す中で、発生する現象をもとに解決と共に問題も特定することである。このような行動は一般的に「試行錯誤」と呼ばれている。今年度はデザイン行動の特徴である「試行錯誤」に注目し、「リフレクティブ・カンバセーション」(Reflective Conversation :Schon 1983:対話と認識の相互作用)を手がかりにインサイト(創造的瞬間:石井2009)との関係について調査と調査結果の整理、考察をした。調査は対象企業が展開する低速・近距離・自動運転モビリティを事業化するプロセスを対象とした。またこの事例は本研究が注目する「人間中心デザイン」を実践している。さらに「人間中心デザイン」は最初から生まれたいたわけではなく、製品中心から人間中心への展開が試行錯誤のなから見出していく。この事例は社会に存在しない製品を自身やチームメンバーの体験とその体験を基に開発したプロトタイプの社会実験を繰り返す。その中で発生する対話を記録し、対話の内容と対話から生まれた内容について記録をした。今回の調査、分析の独自性は、製品やサービスそのものではなく、社会に存在しないコンセプトの製品が、モビリティの特性である既存のモビリティとの関係の中で生み出される役割を対象としている。社会での価値をプロトタイプの社会実験を通じた対話から見出す領域である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イノベーションに重要となる「情報の関連づけ」(Dyer and Christensen,et al.2011調査として、低速・近距離・自動運転のモビリティを展開するスタートアップ代表の合計8回のインタビュー調査および3回の現地視察を実施した。また、膜技術を持つ企業のコロナ禍のシェルタースーツ開発のプロセスについて合計3回のインタビュー調査を実施した。調査結果は文字起こしし、KJ法を使用し分析を行った。その結果を基に、原体験とインサイトの関係について考察をした。原体験は開発者の体験であり、原体験が開発の動機になると共に、原体験のみに存在する粘着性の高い情報(Von Hippel 1994)を自身と対話しながら理解していくプロセスである。その原体験とプロトタイプとして表現するプロセスについて考察を行った。前年度までのプロトタイプを含む表現との対話の事例に加えて、原体験を有する原体験とプロトタイプとの対話によって新たな可能性を見出す領域での調査データを収集した。 調査対象は、生産財を取り扱う企業のコロナ禍のシェルタースーツ開発のプロセスおよび、モビリティスタートアップ企業の開発プロセスである。 本研究の成果は、書籍1冊、論文3本(うち海外1本、国内2本)、口頭報告7回(うち海外2回、国内5回)として公開した。新型コロナウィルス感染症の行動制限が年度前半まで継続していたため、2022年度予定していた、国際学会報告(ISPIM2022、OUI2022、BAM2022)は中止およびオンラインになった。そのため国際学会での報告はISPIM2022、PDMA2022のみとなった。同時に海外イノベーションおよびデザイン研究者との意見交換とフィードバックを獲得する機会が限られた。来年度はより多くのフィードバック得るような機会を設定する予定。
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Strategy for Future Research Activity |
開発者の原体験とのプロトタイプの開発と使用を通じた対話によるデザイン行動ならびに、非開発者とプロトタイプとの対話による非開発者自身が抱える問題について社会実験の事例を通じて、モデルを構築することが今年度の目標となる。前年度から調査を進めている、新たなコンセプトのモビリティにおける社会実験の事例をもとに、非開発者とプロトタイプによって問題発見を通じて「関連づけ」(Dyer and Christensen,et al.2011、Von Hippel and von Krogh 2016)を創造する領域と、プロトタイプの使用を表現として、開発者がその表現を観察する領域の2つに分けて分析とモデル化を進める。モデル化にあたっては、「バウンダリー・オブジェクト」(Star and Griesemer 1989)、および「目立たない知識」(山川・清河 2020)の概念を活用し、開発者の枠組みの存在と限界を超えるモデルについて考察を進める。具体的にはバウンダリー・オブジェクトで説明される組織境界を橋渡しする役割に加えて、問題発見の役割を示す。さらに「目立たない知識」はイノベーションを生み出すために重要である「異質な組み合わせ」を実行するための手がかりとなる概念である。Brown et al.(1998)は知識の活性は、一般に分類学に基づく「カテゴリ」毎に生じるとしている。知識の活性とは例えば、ある問題にたする解決の組み合わせを考えることである。そのため知識の活性は一般的に「目立つ知識」の間で行われる。しかしイノベーションの実践には分類学とは異なるカテゴリーの探索が求められる。このための要件を調査データをもとに考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスが終息しなかったため、スタンフォード大学CDRチームメンバーとの調査および海外学会報告がオンラインになったため。次年度は、対面のISPIMあるいはBAMでの学会での報告を対面で実施予定。加えて学会会場あるいはスタンフォード大学にてスタンフォード大学メンバーとのミーティングを実施予定。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 観光ビジネス2023
Author(s)
廣田章光,坂田隆文, 片山明久, 四宮由紀子, 岡本健, 山下香, 綱本武雄, 三輪俊輔, 多和田葵
Total Pages
176
Publisher
実教出版
ISBN
9784407205695
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