2019 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な財政運営を企図した自治体財務管理制度と公会計情報の役割の研究
Project/Area Number |
19K01988
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
遠藤 尚秀 大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 教授 (40411805)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関下 弘樹 福山大学, 経済学部, 講師 (30824601)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 地方公共財務管理制度 / 地方公会計情報 / 戦略的公共ガバナンス / 財務リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「持続可能な自治体運営を担保する地方公共財務管理制度」について、わが国自治体のガバナンス強化の観点から英国自治体の実態と比較しつつ下記の点について調査、研究を行うことを目的としている。(1)持続可能な財政運営を目指し地方財務管理制度が平常時にいかに構築され、地方公会計情報がどのように利用されているのか。(2)財政危機に直面する前に、各種財務管理制度や地方公会計情報が有効な情報をいかに当該自治体へ伝達し、早期に有事体制へ移行できるのか。 「研究実施計画」において、令和元年度を次年度に繋がる準備期間と位置づけ、以下の文献・実態調査を予定していた。①国内外の文献渉猟、②日英の公共財務管理の詳しい自治体あるいは専門団体への予備調査。 ①について、研究代表者・分担者・協力者が令和元年4月初旬にキックオフミーティングを開催し今後の方向性や各自の役割分担を再確認し、その後必要に応じて連絡をとりつつ内外の関連文献の渉猟を実施した。 ②について、研究代表者・分担者2名で令和元年7月から約1週間、英国自治体の財務管理の責任者や研究者が集う「英国勅許公共財務協会(CIPFA)年次総会」を訪問し、公共財務関連のセッションへ参加し討論した。(バーミンガムにて) ・2019年10月にCIPFA公表の「新財務管理規範(案)」について、自治体政策・専門支援部部長Don氏等に事前に質問書をなげ議論をした。財務管理の原則や基準は当研究の参考となる。 ・次年度の英国自治体訪問先の選定について、CIPFAの分析・調査部部長Caplan氏から様々な示唆と次年度の協力をえられた。 ・国内自治体については、SNSを使い過去数年間の「財政危機宣言等」を公表した団体の財務分析をおこない公表のタイミングと財務情報の関連性について検討した。コロナウィルス禍により期末に予定していた自治体訪問(予備調査)については延期した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「5.研究実績の概要」に記載のとおり、令和元年度(当科研費助成事業初年度)を次年度の準備期間と位置付けており、下記の初期目標を概ね達成することができた。 ①「公共財務管理」の理論的基礎を固めるために、先行研究や英国の財務管理規範などの収集と検討を行った。 ②次年度で予定している「国内自治体へのアンケート調査」と「英国自治体へのヒアリング調査」をスムーズに実施するために、財務弾力性の低い国内自治体の基礎データの分析や、英国自治体へのヒアリング調査を支援いただけるキーパーソンの把握が実現できた。 なお、コロナウィルス禍の影響で、学会での発表(国際公会計学会関西部会、発表標題:「英国自治体における新たな財務管理規範の導入の現状と課題」)が延期となり、さらには複数の国内自治体も訪問できなかった。次年度の自治体職員向け質問書の確認事項については、当初の研究目的を明らかにできるように、いくつかの自治体の財務担当者に事前に質問内容の有効性を確認し、実施したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度から、わが国の政令指定都市を含む大規模自治体において、各自治体の長の責任のもと「内部統制制度」が法令(改正地方自治法)に基づいて実施される。人口減少社会においても行政サービスを安定的、持続的、効率的かつ効果的に提供していくため、その要請に対応した地方行政体制を確立することが求められている。結果、各自治体は組織として、予めリスク(組織目的の達成を阻害する要因)があることを前提として、法令等を遵守しつつ、適正に業務を執行することが、より一層求められる。当該リスクには「財務リスク」も当然含まれており、コロナウィルス禍の影響で地域経済への深刻な影響が懸念される中、自治体の「財務リスク」はますます高まっている。 このような環境下において、令和2年度から当研究は実態調査(アンケート調査とヒアリング調査)のフェイズに突入する。平常時の自治体の公共財務管理体制が、財政悪化による有事体制へのスムーズな移行を誘発できるのか、その真価が問われている。自治体の現場がまだ混乱している中、まずはアンケート調査を先行して実施したい。アンケート調査内容については、自治体の現場に過度な負担を強いることのないように配慮しつつ、現在の財務リスク悪化を念頭において当研究にとって有効な回答が得られるように慎重に検討したい。
|
Causes of Carryover |
主な原因は、下記のとおりである。 ①コロナワイルス禍での国内の自治体ヒアリング調査(2名)の延期による旅費等予算未執行(影響額:約22万円) ②研究協力者からの公会計関連調査報告書納品の遅れによる謝金予算の未執行(影響額 約16万円) ③海外書籍の一部未購入(影響額 約5万円)他
①と②については、次年度に実施を予定。
|