2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Integrated Reporting Model by Entrepreneurship Theory
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19K02019
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小西 範幸 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (80205434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇佐美 嘉弘 専修大学, 経営学部, 准教授 (60255966)
池本 正純 専修大学, その他部局等, 名誉教授 (80083608)
為房 牧 岐阜協立大学, 経営学部, 准教授 (70756593)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 統合報告 / 企業家機能 / ステークホルダー経営 / 資金主体論 / テキストマイニング / ナイーブベイズ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,統合報告書のトップメッセージから企業家機能を抽出して統合報告書の分析を試みている。 理論的な考察として,本年度は,次の2つの点を明らかにすることで,統合報告によって健全なコーポレートガバナンスが促進されて,企業経営と同時に経済社会のサステナビリティが実現されることを示した。(1)国際統合報告評議会(IIRC)の「統合報告フレームワーク」の考え方の根底には企業家機能の重要性が認識されていることを示した上で,ビジネスの世界にイノベーションを促進していくための1つの仕組みが統合報告であることを明らかにした。(2)資金主体論を介したステークホルダー経営と企業家機能の観点から統合報告の理論形成を行った上で,非財務情報(ESG情報)の開示の根拠を明らかにした。 実証的な考察として,昨年度に引き続き,機械学習における「教師アリ」学習を用いて,英文の統合報告書のトップメッセージから,3つの企業家機能(ビジネスモデル発案機能,リスク負担機能,ガバナンス機能)の有無と各機能を予測するモデルの構築を,ナイーブベイズ法を用いて行っている。本年度は,ナイーブベイズ法の適用について2つの方法を試みた。一つは,3つの企業家機能をナイーブベイズ法によって直接推定し,該当する各段落を個々に予測する方法(直接法)であり,もう一方は,直接法と同様の手順によって「いずれかの企業家機能アリ」データ(語句,文、あるいは段落)を抽出し,あらためてその結果に対してナイーブベイズ法によって各機能を予測する方法(2段階法)である。 その結果,2段階法を用いた予測モデルの方が,「企業家機能アリ」データを見落とす確率の低い予測モデルを構築することができることが判明した。それと同時に,予測誤差を最小化して予測モデルのより一層の精度向上の取り組みが必要である事を理解した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,10か国から各国5社の計50社の統合報告書(英文)のトップメッセージ毎に企業家機能の有無と各機能が判別されている「教師アリ」データを用いて,任意のトップメッセージに対して企業家機能の有無と各機能とを予測するモデルを構築しようとしている。この予測モデルを用いることで,任意の統合報告書に対して,企業家機能に関する記述の有無と各機能を機械的に評価することができるシステム構築が可能となる。 予測モデルの精度向上の取り組みとして,2つの考え方を導いており,(1)企業家機能に関する記述がある段落とそうでない段落のそれぞれに偏って用いられる傾向の強いご語句や語句の組み合わせを抽出し,それらの語句によって学習をさせて,ナイーブベイズ法そのものを改良することで精度向上を図る取り組みを試みている。 しかし,もう一方の考え方である(2)企業家機能を表現する際の文脈に関するルールを抽出し,そのルールを適用することで,ナイーブベイズ法で推定された結果を修正する取り組みについては,共起性評価が十分にできなかったために次年度に持ち越すこととなった。精度の高い予想モデルの構築は,本研究課題遂行のためには不可欠であるため,現在,専門的知識の提供を受けているデータサイエンス領域の研究者を,次年度には研究分担者として加えることで,(2)の取り組みの早期解決を図ることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
任意の統合報告書のトップメッセージに対して,3つの企業家機能に関する記述の有無と各機能を機械的に評価することのできるシステム構築を行うためには,予測モデルの精度向上が不可欠である。 そこで,企業家機能を表現する際の文脈に関するルールを抽出し,そのルールを適用することでナイーブベイズ法で推定された結果を修正する方法を採用する。これは,語句と語句の関連性評価や慣用的に用いられる定番の組み合わせ,すなわちコロケーションの抽出によって実現されるため,次年度では,語句と語句の関連性を評価するための共起性評価や対応分析を用いて創出される仮説を検証することで,予測モデルのより一層の精度向上に取り組む。 この予測モデルを用いた世界10か国の統合報告書のトップメッセージの分析を通じて,統合報告書の国際間比較を行ってみる。とくに,日本企業に対しては,以前に統合報告書公表企業に対してのアンケート調査を行っているため,当該約100社のトップメッセージについて,予測モデルを用いて機械的に評価した結果とアンケート調査の結果との比較を行って,統合報告書公表の企業像についての考察を行うこととする。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大による外出自粛規制のため,本科研研究会の殆どがリモートになったり,参加予定の国内外の学会がリモートになって,旅費支出が減少している。2021年度においても引き続きリモートの当該研究会が主になるため,また,共起性評価や対応分析を用いる必要性から,大画面・高解像度のマルチディスプレイ環境を整備して,作業効率の大幅な向上を図るようにする。 テキストマイニングを用いた分析で用いた図表を印刷するために,物品費でA3判の用紙対応のカラーレーザープリンター(キャノン LBP841C)を購入する予定であったものが未購入であるため,2021年度に購入する。
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Research Products
(4 results)