2020 Fiscal Year Research-status Report
医療のサービス産業化、女性医師増加の中医師の働き方の課題と改善策についての研究
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19K02088
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
久保 真人 同志社大学, 政策学部, 教授 (70205128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バーンアウト / 医師 / 女性医師 / 日本版バーンアウト尺度 / ジェンダー / 働き方改革 / ストレス / 医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年末に医師(回答者1261名)を対象に実施した調査結果を2つの論文にまとめた。 最初の論文では、回答者全体の勤務状況、バーンアウト得点などを、米国の調査結果と比較しながら、日本の医師の現状について考察した。日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は、情緒的消耗感2.86/5点、脱人格化2.21/5点、個人的達成感の低下3.17/5点であった。またバーンアウトのリスクは、労働時間や患者数といった労働負荷だけではなく、自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業の増加などと強く関連していた。考察では、個人、病院、学会、行政、それぞれのレベルでの改善策について論じた。 2つ目の論文では、男性医師と女性医師の結果について比較、検討をおこなった。勤務・生活状況では既婚者のみに男性医師と女性医師との間に有意な差が認められた。具体的には、労働時間など勤務状況では男性のほうが厳しい条件で勤務していること、家事分担では女性の負担が重いことが確かめられた。日本版バーンアウト尺度による分析では、全体の得点では男性医師と女性医師との間に有意な差は認められなかったが、バーンアウトと関連する要因については、男女に共通した要因(仕事の有意義感、年齢など)にくわえて、男性医師特有の要因(有能なスタッフの存在など)あるいは女性医師特有の要因(診療時間など)が明らかとなった。 さらに、男性医師と女性医師との間で専門とする診療科を選択するうえでの意思決定プロセスに違いがあるとの示唆が得られた。 今回の調査結果から、当該研究課題のテーマである医師の働き方、とりわけ増加する女性医師をとりまく環境の問題について詳細な検討をおこなうためには、焦点を絞った質的研究が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画では、2020年度までに医師のインタビュー調査を終えている予定であったが、まだインタビュー調査をほとんど実施できていない状況である。言うまでもなく、2020年初めより続く、コロナ感染症拡大の影響を強く受けているのが医療の現場である。このような状況の中で調査を実施することは、たとえリモートにより実施できたとしても、現場の医師にさらなる負担をかけることになり、倫理的にも自粛せざるをえないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症拡大の前後で、当該研究課題の調査対象である医師の労働環境は一変してしまった。当該研究課題のテーマである女性医師の働き方の問題は、依然として医療現場の大きな課題ではあるが、喫緊の課題として、コロナ禍における医師あるいは医療従事者の健康問題、労働環境の改善について早急に取り組む必要があろう。 2021年度が当該研究課題の最終年度であるが、次年度以降に継続する研究課題として、コロナ禍における医療従事者の労働環境の改善とメンタルケアの研究を視野に入れながら、医師、そして必要に応じて対象を医療従事者に拡大していきながら、研究を継続していく予定である。
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Causes of Carryover |
予定されていた調査が実施できなかったため次年度使用額が生じた。 当該年度予定されていた調査を次年度に実施する際に助成金を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)