2019 Fiscal Year Research-status Report
The formation of social relations and the structure of lifeworld of Central American migrants in Mexico
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19K02104
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐々木 祐 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90528960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移民 / メキシコ / 中央アメリカ / 支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中央アメリカ、特にグアテマラ・ホンジュラス・エルサルバドルから、「北」を目指して移動する移民たちが構築するテンポラルな生き延びのためのネットワークやその戦略を明らかにすることにある。とりわけ、現在のアメリカ及びメキシコの移民政策により、本来であれば移動経路に過ぎなかったメキシコ国内にとどめ置かれている人々が、その経験を通じてどのように自らを位置づけ、またどのように行為しているのかに焦点を当てる。 メキシコでは2018年末に、左派を中心として広い支持を得てアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権が成立し、暴力と汚職に疲弊した国と社会の改革が宣言された。人権侵害や脱法行為の横行していた移民対策についても、特に支援団体や人権団体からはその刷新が期待された。だが、いくつか制度的な改善はあったものの、特にトランプ政権の一貫した移民流入抑制圧力により、移民に対する扱いは実質的に大きく変化しているとはいえないのが現状である。 研究初年度にあたる本年度は、予定通り2回の現地調査を実施し、移民支援施設での参与観察・聞き取り調査を行った。上述の大きな状況変化が、具体的な支援の現場や移民自身の行為にどのような影響を与えているのかについて貴重な知見が得られたと共に、先の見えない事態に置かれ続けている主体の振る舞いや戦略について、理論的に考察するための手がかりも得られている。こうした成果を受け、次年度以降も予定通り研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は2度の現地調査を実施し、また研究推進に必要な書籍や機材の購入も行った。研究計画にも記したとおり、調査先の一つであるメキシコ市内の移民支援施設とはすでに信頼関係を築いており、スムーズに調査を実施することができた。所属大学での業務の事情で、夏期の調査期間は予定よりもやや短いものとなったが、大きな問題はなく調査・研究は遂行できている。また、調査に基づいた論文を2本執筆し、論集として2020年度中に刊行される見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の2年目にあたる2020年度は、前年度の知見をさらに深めるべく同支援施設での定点観測を継続する。また、メキシコ市以外にも成立しつつある新たな移動経路とその現状を明らかにするため、ベラクルス州の支援団体での聞き取り調査も実施する予定である。こうした調査により得られた成果は、論文および学会発表の形で公表を行う。
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Causes of Carryover |
上述のように、夏期に実施した調査の期間を予定より短縮せざるを得なかったため、それにかかるはずであった滞在費や諸経費を次年度へと繰り越した。もともと経費については最低限度の申請で計上してあるため、次年度の研究実施にあたり、この差額は正常に執行可能である。
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