2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K02117
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
羽田野 真帆 常葉大学, 健康プロデュース学部, 講師 (90635038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照山 絢子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (10745590)
松波 めぐみ 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (80512607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 聴覚障害のある教員 / 聴覚障害教員 / ろう教員 / 手話 / 障害学 / チームエスノグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、障害学の視点から聴覚障害のある教員(以下、聴覚障害教員)の教職経験について検討することである。研究期間の1年目となる2019年度は、聴覚障害教員を取り巻く教育現場の実情について情報収集をすすめることを目的とし、聴覚障害教員の研修会やろう学校の学校見学におけるフィールドワークを中心に調査を実施した。 1年目の研究活動の成果として挙げられるのが、第一に、聴覚障害教員の多様さの実態がよりクリアに見えてきたことである。多様であること自体は研究開始当初から理解していたものの、その多様性を生み出す要因が整理されてきた状況である。すなわち、教員自身が受けてきた教育や得意とするコミュニケーション手段などの個人的な要因と、勤務先の学校の特徴(学校種別や児童生徒数の多少、教育方法等)や地域的な特徴(聴覚障害教員の採用数の多少)などの環境的な要因が掛け合わされて、教員としての経験の多様性を生み出していることが見えてきた。しかも一人の教員の中にも多面性があり、場面や話す相手によって、コミュニケーション手段を切り替えていることも珍しくない。このような多面性を踏まえながら、「聴覚障害教員の経験」にいかに迫っていくかが、2年目以降の課題である。 第二に、研究チームの個々の研究者が同じフィールドにおいていかに異なる経験をしているかが明確になったことである。研究代表者・分担者がチームエスノグラフィを実施するのは本プロジェクトが初めてではない。しかしこれまでは、チーム内の手話の理解度の差は自覚していたとしても、それに起因するお互いの経験の違いに意識的に着目したことはなかった。今回、フィールドワークの中で「見たこと・感じたこと」を意識的に共有することで、同じ場面に身を置いていても、そこで経験していることが想像以上に異なっていることに気づくことができた。2年目はこの点をさらに活かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビュー調査を1年目から実施できなかったことが理由である。研究計画時には仮説探索的にインタビュー調査をすすめていくことを予定していたが、調査対象者の多様性を踏まえ、ある程度、調査仮設をたてた上でインタビュー調査を依頼していくことにしたが、その作業に時間がかかり、インタビュー調査の開始が遅れてしまった。2年目以降に調査を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに対する対策は、本研究を遂行する上でも大きな課題をつきつけている。何よりも大きな課題となるのが、今後も長期にわたって移動に制約があるだろうことである。本研究では、日本各地のろう・難聴教員にインタビュー調査を実施することを予定しているが、直接現地に出向いて対面での調査実施は、当面の間、非常に難しいことが予想される。 そこで、移動の制約が解除されるまでは、当面、テレビ会議システムを活用したオンラインによるインタビューを実施することを計画している。ただし、通信状況によってはこの方法にも課題が残る。特に、インタビュー対象者が手話話者である場合、調査者、調査対象者ともに、スムーズな映像配信が可能となる通信環境が求められるためである。 また、研究活動の遂行においては、研究責任者や研究分担者だけでなく、調査対象者である教員たちが、新型コロナウイルス対策のための業務に時間的・精神的資源を割かざるを得ない状況にあることを考慮する必要があると考えている。研究期間の延長も視野に入れながら、調査対象者に負担のない範囲で調査を実施するよう留意したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初、初年度に実施を予定していたインタビュー調査を2年目以降に延期したことにある。その結果として、インタビュー調査にかかる旅費や文字起こしの外部委託料を、次年度に繰り越すこととなった。2年目はインタビュー調査の主題を教員の経験にあてて、本格実施することを計画しているが、引き続きオンラインでの研究活動が中心になると予想される。場合によっては研究期間の延長も選択肢の1つとして考えながら、調査活動を遂行しながら取りうるべき方策を検討していきたい。
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