2019 Fiscal Year Research-status Report
介護職員におけるバーンアウト傾向の規定要因とその対処方策に関する研究
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19K02192
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Research Institution | Asahikawa University |
Principal Investigator |
栗田 克実 旭川大学, 保健福祉学部, 准教授 (30530109)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 介護労働 / ストレス / バーンアウト / 離職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に介護福祉士を中心とする介護専門職を分析対象とし、業務上で感じるストレスとその対処行動、長期的に蓄積していくストレスへの反応として引き起こされるバーンアウトとそれを規定する要因について、社会調査の手法を用いて明らかにすることを試みる。あわせて、管理者側に対する調査を実施することにより、バーンアウトの抑制に有効な雇用管理等の施策を検討し、直近で15.4%となっている離職率(公益財団法人介護労働安定センター(2019)『平成30年度介護労働実態調査(事業所調査)』)の低下と介護専門職の職場定着に資することを目的としている。 研究初年度となる今年度は、介護労働の歴史的経過と対人援助職に共通するバーンアウトについて、先行研究から得られた知見を整理した。特に2000年代後半からは、介護保険施設等において介護職による看取りをキーワードとした研究が増えてきている。一方で、介護職が抱える身体的・精神的ストレス、ストレスコーピングおよびバーンアウト(とその予防)、そして離転職をキーワードとした調査についても概ね把握することができた。 また、北海道内の特別養護老人ホームにおいて、身体拘束適正化に関する研修会の講義・ワークショップを2回担当させていただき、本研究で取り組んでいる内容の一部を紹介しながら、ストレス・感情マネジメントに関する参加者(介護職)間のディスカッション等により、介護労働の現状の一端を把握することができた。 さらに、第2年度後半から第3年度にかけて実施する調査の設計・作成について着手した(しかし、これに関してはやや遅れている)。このことと並行して、現職介護職員や元職員への面接調査、管理者(あるいは経営者)への面接調査内容の検討も開始した。この作業に関しては、施設における管理者へのヒアリングを3回実施することができ、貴重な示唆をいただくことができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、初年度の研究では、基礎的文献および調査資料を入手することができたうえに、今後の研究の深化のために、現場職員に対する研修会やワークショップへの協力、その過程における管理職へのヒアリングを通して、課題解決のために有用な情報を得ることができたと考えている。 これらは、第2年度以降の研究(特に調査)を進めていくうえで大きな成果であり、今後の研究展開に大いに寄与するものと考える。 以上のことから、研究初年度の計画は概ね達成できたものと考えているが、年度末から開始した調査の検討は現時点でやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度後半から第3年度にかけて、調査を実施する予定であるが、その方法については、類似する調査の実施・回収状況や、(後述するが)新型コロナウイルス感染症の感染拡大をうけた介護現場の状況を十分に考慮し、慎重に計画・実施しなければならない。 第3年度は、調査の分析を行いつつ、現職介護職員・離転職を行った元職員、さらには雇用・管理する側への半構造化面接による調査を実施する。 質問紙調査の分析では、職務継続の意思、自己効力感やストレッサー、ストレスコーピングの方法、バーンアウト傾向を把握することを試みて、経験年数、職務内容、そして職場環境などとの関連を検討する。同時に、これらの変数と雇用管理との関係にも着目し分析を行う。なお、本調査で得られた結果と各種先行調査の結果とを比較することも意識しながら、検討を進めていく。 現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続いており、いくつかの介護保険施設においては入所者・職員の感染が次々と判明し、大規模なクラスターが発生した。現時点においても、有効なワクチンが未だ存在せず、同感染症が収束していないなかで、職場環境が大きく変わった現場に従事する介護職のストレスの反応の増大、健康への影響は計り知れない。 本項の冒頭で述べたとおり、これらの事情を十分に考慮したうえで、本研究が当初の計画通り進行できるかどうかについて判断を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究による資料収集が予定回数を下回ったことにより、今年度の配分金を計画通りに執行することができなかった。次年度以降は調査を計画しており、これらに関する諸経費は当初の計画通り執行したい。
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