2021 Fiscal Year Research-status Report
非行少年における対人意識の変容と非行抑止に関する研究
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19K02201
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
作田 誠一郎 佛教大学, 社会学部, 教授 (10448277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 少年非行 / 少年院 / 規範意識 / 対人意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非行少年の対人意識および規範意識の変化を明らかにするためにアンケート調査から得た知見をもとにインタビュー調査を実施して、少年院の出院後の支援および非行の抑止について考察することにある。特に今年度は、学校社会を中心に分析を進めた。その結果については、各所属学会にて報告をおこなった。 日本教育社会学会では、「非行少年のいじめ経験とその特徴―少年院の質的調査を通じて」として、在院少年の学校生活に着目し、特にいじめ経験を通じて学校社会における対人意識を考察した。結果として、いじめ経験を4類型化(「いじめた経験」「いじめられた経験」「両経験あり」「両経験なし」)することにより、非行少年がそれぞれの経験を有していることが明らかになった。「いじめた経験」や「両経験あり」からわかるいじめ加害とは、暴力系のいじめというより「無視」や「いじり」などコミュニケーションに起因するいじめが主な形態であった。このコミュニケーションに起因するいじめでは、クラスや仲間グループの空気感を重視したいじめであった。しかし、これらの事例では、いじめ被害者の立場に立ったいじめの認識に関する語りも明らかになった。顕在化しにくいコミュニケーションに起因するいじめが、被害者の視点からいじめと認定されることが非行少年にも自覚されていることがわかった。また、いじめを制止する行動は、今後非行文化等の研究も射程に入れて考察する必要があり、本調査における非行少年といじめの分析において特徴的な行動として注目される。この分析は、さらに事例を増やしていくことで、クラス内のいじめのメカニズムと非行少年のポジションなど、いじめや非行抑止と価値規範について考察が進められた。その他、日本社会学会および日本社会分析学会においても本調査に基づく結果について報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナにより施設におけるインタビュー調査が実施できない状況が続いている。しかし、一時的に流行が収まった期間に一つの施設において調査が実施できたため、書き起こしとともにこれまでのデータを含めて学会で発表をおこなった。このデータを含めて研究の目的である分析も可能であるため、調査の依頼と実施に並行しながら各所属学会において調査報告をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、予定している調査先と調査の実施に関して協議している。これまでの調査データに基づく分析も可能ではあるが、新たなデータを用いることでより精度の高い分析が実施できるように調査を継続する。調査期間内にデータを精査して調査結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
昨年度の新型コロナの蔓延によって、予定通りの調査に至らなかった。一部の施設において調査が実施できたため、そのデータを含めた分析はおこなっている。分析結果については、学会を含めて発表を行った。本調査で予定していた調査先に再度調査の実施を打診している。
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