2019 Fiscal Year Research-status Report
障害者雇用と福祉的就労の統合に向けた「みなし雇用」の検証
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19K02211
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
朝日 雅也 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30315717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 障害者雇用 / 障害者就労 / 福祉的就労 / みなし雇用 / 雇用と福祉の統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の障害者雇用において、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)に基づく法定雇用率制度は重要な役割を果たしている。一方、障害者の就労を広く捉えたとき、障害者雇用率制度に代表される一般雇用のみならず、障害者総合支援法に基づく福祉分野の就労系サービス、特に就労継続支援事業等の福祉的就労も認識する必要がある。両者は根拠となる法制度が異なるため、有効な政策によって統合化されているとは言えず、障害者の就労機会は二分法的に分断されている。そこで、両者を有効に結び付ける方法として、直接に障害者を雇用する代わりに、福祉的就労の事業所に発注した際等に、その発注額等に応じて障害者雇用に算定する、いわゆる「みなし雇用」が考えられるが、その制度化の可能性について明確なエビデンスに基づく検証に至っていない。そこで「みなし雇用」について、障害者法定雇用率の対象となる企業、福祉的就労事業所並びに対象となる障害者の意識等の観点から総合的に検証を行ない、融合の可能性と課題を理論的に提示することとしている。 そのため、初年度においては、障害者雇用率制度における「みなし雇用」の検討の経過と、それぞれの段階で用いられてきた概念を整理し、今日的な「みなし雇用」概念の設定を試みた。具体的には、国内外の障害者雇用・就労に関する先行文献、行政発表資料、国会答弁等における「みなし雇用」に関する協議過程等、多様な既存資料を探索し、「みなし雇用」概念の定義づけについての検討を行った。 併せて、わが国における障害者雇用率制度の発展過程について「みなし雇用」に対する見解の変遷等の視点から歴史的検証も行い、「みなし雇用」の今日的意義についても考察した。さらに「みなし雇用」に対する企業並びに障害者就労事業所の意識調査の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次年度に実施を予定している「みなし雇用」に対する企業並びに障害者就労事業所の意識に関する調査に向けて、年度末に障害者雇用企業等へ訪問するプレ調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、計画通りに実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目においては、初年度に検討した「みなし雇用」の概念規定の結果を踏まえ、遅延していたプレ調査を含め、企業2000社、障害者就労支援事業所2000カ所並びに対象になると考えられる障害者600人(身体障害200、知的障害200、精神障害200)に対する質問紙調査を実施する。同調査では、障害者雇用率制度における「みなし雇用」に対する基本的な考え方と、障害当事者が「みなし雇用」についてどのような考え方・とらえ方をしているかを問うとともに、もし、「みなし雇用」を制度化する場合には、どのような基準での算定が可能か(みなし基準水準の探求)、「みなし雇用」の制度化によるメリット、「みなし雇用」を制度することによるデメリット、障害者にとっての「みなし雇用」の位置づけ制度の運営方法と課題等について、調査を行い、その結果を多様な観点から分析し、「みなし雇用」の制度についてその構造の構築を試みることとする。新型コロナウイルス感染拡大による影響に関しては、質問紙調査では直接的な影響は少ないことが予想されるものの、経営状況の悪化に伴う障害者雇用への影響が大きい場合には、調査への協力を要請する際の方法等についての工夫・検討を要することになる。
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Causes of Carryover |
みなし雇用の概念を検討するための行政発表資料や国会答弁等における資料については多くがWeb上での情報収集によることができ、直接的な経費の支出に至らなかったところである。 また、次年度に実施を予定している「みなし雇用」に対する企業並びに障害者就労事業所の意識に関する調査に向けて、年度末に障害者雇用企業等へ訪問するプレ調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、計画通りに実施することができなかった。 次年度については、新型コロナウイルス感染症の影響に留意しながら、必要なプレ調査を行うこととし、それに伴う旅費の執行を予定している。
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