2021 Fiscal Year Research-status Report
A historical research on cooperativity of new middle class and social education: Case studies on residents of apartment buildings in the high growth period
Project/Area Number |
19K02429
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
久井 英輔 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10432585)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 社会教育 / 団地 / 新中間層 / 自治会 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、高度成長期の団地住民の間で形成された自治組織の動向、またその動きと並行して取り組まれていた学習・文化活動について、戦後初期・高度成長期における住民自治組織と社会教育、というより広い文脈に位置づけ直す作業を行った。 具体的には、戦後初期、高度成長期における以下の三つの議論群を扱った。すなわち①市町村レベルと部落・町内レベルそれぞれの社会教育事業・公民館活動のあり方をめぐる1960年代までの動向とそれをめぐる同時代の議論、②1960年代以降の都市近郊の新興住宅団地の自治会と社会教育の動向とそれをめぐる議論、③1970年代初頭から展開された自治省のコミュニティ政策と自治体社会教育、公民館の関係の動向をめぐる議論、の三点である。 戦後初期・高度成長期において、社会教育行政にとって町内会・部落会などの住民自治組織は、最も住民に近い社会教育実践の基盤として見られつつも、非合理的な慣習、旧来的な抑圧構造の温床としてもしばしば語られていた。部落会・町内会のこの両義的な位置づけこそが、当時の社会教育行政にとっての初期設定になっていた。このことを踏まえ、1960年代における団地における「自治会」とその学習活動への注目、また部落会、部落公民館の変革を試みる「自治公民館」の取組が、その背景こそ違うものの、ともに住民自治組織の非合理性・抑圧性を克服しようとする取り組みであり、その理想を「自治」の語に託していた点で共通項を有していたことを論じた。 また1970年代においては、自治省のコミュニティ政策とともに「コミュニティ」の理念が人間性の疎外を克服するための積極的な目標・理念としての位置価を帯びるようになると、住民自治組織の非合理性・抑圧性とその克服という課題が、コミュニティの理念に関する語りの中に埋没していったことを論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度同様、新型コロナウィルス感染症の影響により、図書館資料や団地自治会資料などの閲覧、収集に支障をきたす期間が続いたため、十分な資料収集を行う時間が確保できなかった。また、研究代表者は2021年4月に法政大学に転任したが、前任校(広島大学)の補充人事が遅れたため、前任校の学部・大学院の授業の大部分を2021年度も引き続き担当する必要が生じた。そのため、本務校での業務とあわせて、教育業務にかかる時間が例年と比較して大幅に増大し、研究作業に投入するエフォート自体を大幅に縮小させざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
旧・日本住宅公団が高度成長期に設置した団地(いわゆる公団住宅)の近隣地域をフィールドとして、団地自治会の沿革や学習・文化活動に関する記録、周辺自治体の社会教育担 当課の保管資料などの収集を行う予定である。 2021年度も同様の収集作業に着手してはいたものの、前掲の理由で焦点を絞った調査にまで至らなかったため、今年度は、フィールドとした地域において、住民自治組織の自発的な学習活動がどのように展開したか、またそれが、同地域の社会教育行政とどのような関係を有していたかという点を中心としたインテンシブな資料調査を予定している。
|
Causes of Carryover |
2020年度において、新型コロナウィルス感染症の影響により、資料収集のための出張が想定よりも少ない回数しか行えず、もともと予定していた使用額を大幅に下回る金額しか使用できない状況となっていた。また2021年度についても、前任校と本務校との教育業務を同時に引き受ける必要があったため資料収集等の出張は十分な回数行えず、また前年度助成金の繰り越し分を使用したこともあり、大幅な未使用額がでる状況となった。 2022年度については、いくつかの対象地域(公団住宅とその周辺自治体)に絞って、団地自治会の沿革や学習・文化活動に関する記録、周辺自治体の社会教育担当課の保管資料などの収集を行う予定である。 ただし、2021年度分の助成金を大幅に繰り越していること、研究作業自体が想定より遅れていることを考慮し、研究期間の一年間延長を申請することも予定している。
|
Research Products
(1 results)