2021 Fiscal Year Research-status Report
矯正教育としての「満蒙開拓青少年義勇軍」の送出に関する歴史的研究
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19K02449
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
白取 道博 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (00226325)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 満蒙開拓青少年義勇軍 / 矯正教育 / 少年保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本帝国期において実施された「満蒙開拓青少年義勇軍」に応募した要保護少年の存在に着目し、その送出の論理と実態とを明らかにすることを課題とする。具体的な目標は次の三点である。①司法省を中心とした少年保護政策の遂行主体の政策意思を系統的に把握すること。②矯正院・少年保護施設における処遇の推移を把握すること。③拓務省を中心とした青少年義勇軍政策の展開過程における歴史的位置を測定すること。以上を通じて近代日本における青少年動員政策が内包する青少年観に関する記述を豊富化するものである。 2021年度は、上記②を基軸として研究を遂行した。司法省主催の各種の会同に関する記録を時系列に調査することに重きを置いた。たとえば『第三回保護観察所長会同議事速記録』(1938年6月)においては「大陸進出」の名の下に保護観察対象者を満州国へ転住させる動向が注目されており、その容易な実行方策として青少年義勇軍への応募勧奨が議論の俎上に上っている。その後も少年審判所長・保護観察所長・矯正院長が召集された各年度の会同において、陸海軍への現役志願者と共に保護事業の存在意義を証する上で有益な事象であるとの視線は注がれたが、同時に保護観察対象者が青少年義勇軍内部の秩序を動揺させている事例に注意が払われるようになっていく。「南方進出」が焦点となるにつれ青少年義勇軍への応募勧奨に関する議論は退潮に向かった。 『司法保護月報』『少年保護』等の逐次刊行物を通じて応募の実態を探求したが、全般的な動向を把握するには至らなかった。個別施設に即した把握が必要であることを再確認するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度内に研究成果を取りまとめ、論文として公刊するに至らなかったため。関連する逐次刊行物所載記事の収集と精査が未了であること、さらにはオンラインによる公文書検索を補完する実地史料調査の遂行が充分におこなえなかったことにより、公表するに足るまで知見の精度を高められなかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
オンラインで利用可能なデータベースのさらなる利用と刊本として復刻された史料の積極的利用とを進める。本研究に関連するデータベース登載情報の連結、また関連史料のデジタル化状況の把握を基礎的な作業として組み込む必要がある。
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