2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K02524
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
太田 美幸 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20452542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スウェーデン / ジェンダー / 発達文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀前半に活発化したスウェーデン民衆運動に内包される教育的機能がジェンダー平等化にいかに寄与してきたのかを解明することを目指すものである。スウェーデンでは1960年代の制度改革を経てジェンダー秩序が劇的に変化したが、先行研究ではその要因として、女性運動の組織率とその社会的影響力が大きかったことが指摘されている。本研究では、ジェンダー秩序の変化の兆しが現れた諸局面における女性たちの生き方の算段や自己実現の構想(発達文化)の変化に注目し、新たな自己実現のイメージを形成しその実現の手立てを構想した女性たちにとって女性運動がいかなる意味を持っていたのかを探り、それがジェンダー秩序の転換において果たした役割を明らかにすることを目指している。 2020年度は、本研究を基課題とする国際共同研究強化(A)の調査に取り組むため9月よりスウェーデンに長期滞在し、並行して本研究のための資料収集等も実施した。COVID-19感染拡大防止のため国内での移動が制限されていたため、遠方の調査先に出かけることはかなわなかったが、民間団体が約30年かけて収集した女性労働者によるライフヒストリー集を入手することができ、解読作業を開始した。資料は膨大な量にのぼるため、2021年度も引き続き解読作業を進める予定である。あわせて、スウェーデン国内のジェンダー史研究の最新動向のレビューもおこなった。資料解読と並行して、スウェーデン女性運動史の通史を女性たちの生活世界の視点から描く作業も開始した。2019年度に引き続き、2020年度も予定していた地方調査先での資料収集が実現しなかったが、これについてはCOVID-19の収束後に実施することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を基課題とする国際共同研究強化(A)に採択され、2020年度は国際共同研究強化(A)にかかる調査を優先しておこなったため。また、COVID-19感染拡大防止の影響により現地調査の実施が制限され、当初計画のとおりに資料収集を進めることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を基課題とする国際共同研究強化(A)に採択されたため、2020年9月よりスウェーデンに滞在し、国際共同研究強化(A)の研究課題にかかる調査を優先しておこなっている。これは基課題である本研究とも密接に関連する調査であるため、滞在中は本研究にかかわる資料収集や分析作業も付随的に実施してはいるが、国際共同研究強化(A)による現地滞在期間は本研究について当初予定していた作業の一部は2021年度後半以降に繰り越すことにせざるを得ない。さらに、COVID-19感染拡大の影響により資料収集が困難な状況が継続しており、とくに女性運動諸団体の本部や地域支部に保管されている活動記録の収集については、現時点で調査先への訪問の目途がたっていないため、代替となるデータを探す必要が生じる可能性もある。ライフヒストリー資料についてはすでに入手することができたため、まずはこれらの分析を進め、その他の資料については状況を適切に考慮しながら柔軟に進めていくこととしたい。 研究成果の公表については、スウェーデン女性運動史の通史を女性たちの生活世界の視点から描く作業を開始したところであり、可能であれば2021年度中に単著として出版する予定である。また、2021年度にスウェーデン国内で開催される関連学会での口頭報告や論文投稿も計画している。さらに、日本国内のメディアにおける一般向けの記事として、研究成果の一部を複数回にわたって発表していくことも予定している。
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Causes of Carryover |
2020年9月より国際共同研究強化(A)によりスウェーデンに長期滞在しているため、本研究の予算による旅費の支出の必要がなく、本研究に必要な資料の収集にかかる費用のみ本研究の予算から支出した。COVID-19感染拡大により実施できなかった調査については、2021年度以降に可能な範囲で実施する予定であり、残額はその際に使用する。
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Research Products
(3 results)