2019 Fiscal Year Research-status Report
Consideration on the gender stories which are reporoduced in the youth cultures: A comparative study between Czech and Japanese cases
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19K02532
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
石倉 瑞恵 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (30512983)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジェンダー / 若者文化 / 女児文化 / 再生産 / チェコと日本 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、価値再生産の場としての「若者文化」の中で伝達される女性のジェンダー・モデルやドミナント・コースをチェコと日本の比較に基づいて分析することにある。令和元年度は、文化の重層性に着目し、若者文化の土台となる児童文化に関する比較分析を中心として行った。また、次年度以降実施する質問紙作成のためのプレ調査を行い、質問紙作成の手法について検討した。 児童文化に関する比較研究は、資料文献調査、市場調査を中心として分析した後に、世界教育学会においてその成果を発表し、視点の新規性について評価を得ることができた。得られた知見は以下のとおりである。チェコおよび日本の玩具とその広告を分析し、社会的に受容されている女児玩具を介して伝達されるジェンダー・イメージを明らかにした。チェコおよび日本において、男児向けの玩具は、現実社会における公共交通網や自動車産業、建築業等の発展期、特に日本の場合は高度経済成長期に多様化した玩具が中心であり、未知の世界に挑むチャレンジ精神を育む内容である。一方で、女児向けの玩具は、消費文化(アクセサリーづくりやコスメティクス)や再生産活動(ドールハウスやままごと)を題材としたものが多い。言い換えるならば、男児文化は社会の縮図であり、女児文化は日常生活の縮図である。とりわけチェコでは、社会主義期に女児玩具のジェンダー化が進み、女児にはベビー人形(付属して人形用ベビー・ベッドやバギー)を与えることが好まれていた。すなわち、女児文化が伝えている社会的イメージは、日本の場合は、19世紀後期から20世紀初頭の学校教育で伝達された良妻賢母像、高度経済成長期に推奨された専業主婦像である。チェコの場合は、社会主義女性解放思想の下で育まれた「使命としての母像」、労働者である以前に社会主義国家繁栄の母であれとする社会的イメージである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調」と判断する理由は、本研究の基礎にあたる次の3点において進捗が見られたと考えるからである。 第1に、若者文化を深く解釈するために不可欠となる児童文化の分析を行った点である。本研究は、チェコおよび日本の文化的相違の深層に存在するそれぞれのジェンダー・ストーリーとジェンダー・ストーリーを伝達する若者文化のインパクトを明らかにすることを目的とするが、若者文化は、児童文化の延長線上にあるものなので、若者文化のベースとしての児童文化比較分析が必要であると考えた。チェコと日本の女児文化、そこで伝えられるジェンダー・イメージには類似した社会背景に起因する共通点と異なった社会背景に起因する相違点があることを見出した。また、対比研究のために、男児文化に見られるジェンダー・イメージと男児文化を形成した社会的背景にも視野を広げた。その結果、男児文化と女児文化の補完性に気づくことができた。この視点は若者文化の解釈においても有効であると考えらえる。 第2に、両国における児童文化と学校における児童文化の扱いを歴史的にさかのぼり、社会発展と児童文化開花の関連性を分析する中で、チェコと日本の比較を行うための社会的知見を広げるとともに、現在のジェンダー・モデルに影響を及ぼしていると考えられるチェコおよび日本それぞれの時代性にたどり着くことができた。 第3に、日本の公立、私立、および文科系、理科系の女子大学生に質問紙作成のためのインタビューを実施し、質問紙調査の内容について検討した。試行的に質問紙を作成して実施した結果、若者文化に関する項目のみならず、児童文化に関する項目を加味することが分析上有効であること、および質問意図の誤解釈、選択肢、自由記述の不機能等、いくつかの改善課題が明らかになったので、次年度の調査紙作成にその知見を活用することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
女子大学生の価値観形成に影響を及ぼす若者文化、その中で伝えられるジェンダー・モデルを明らかにするための質問紙を作成する。前年度の改善課題を反映させ、質問項目、選択肢、自由記述を再検討する。調査項目には、①大学生になるまでに培った価値観に関する(幼少期に親しんだ児童文化等を問う)項目群、②現在主体的に選びとる価値観に関する(頻繁に活用・視聴する雑誌やウェブ情報、テレビの中で関心のある事象や好きな情報を問う)項目群、③現在所属するコミュニティにおける役割に関する(サークル活動・アルバイトなど学外のアクティビティの中でどのような役割を果たしているかを問う)項目群を含める。①と②、②と③の相関を分析することができるよう質問項目と選択肢を選定する必要がある。 今年度は、国外への移動が困難な社会情勢にあるので、日本国内での調査実施を先行させる。質問紙作成と同時に調査実施大学を検討し、人文科学系、社会科学系、自然科学系など対象とする学生の多様性に考慮して実施大学を選定する。質問紙調査を実施・回収した後は、最初に②の項目群を集計し、挙げられている雑誌やウェブ情報、テレビ番組等を収集する。その媒体で多用されているジェンダー・モデルとその伝えられ方を分析した後に①と②、②と③の相関分析を行う。 社会情勢が安定した後に早急にチェコ調査を実施できるよう準備を行う。国立コンタクト・センターと連絡をとりつつ、調査時期、調査実施大学について検討する。日本用の質問紙に基づいてチェコ用の質問紙を準備する。大枠として先に述べた①~③の項目群を含み、チェコの実情に合わせて質問内容と選択肢を検討する。チェコ調査は質問紙の実施と②の媒体収集を目的として行う。日本での調査と同様に相関分析を行い、最後にチェコと日本との比較考察を行う。
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Research Products
(2 results)