2021 Fiscal Year Research-status Report
障害乳幼児の一貫性・継続性のある包括的支援体制モデル構築に関する研究
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19K02625
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
是枝 喜代治 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (70321594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 記代子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (80171156)
田尻 由起 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (90802249)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 障害乳幼児 / IFSP / 発達支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は前年度に実施した児童発達支援センターの関係者に対するインタビュー調査の結果について再検討を行い、改めて地域療育の中核機関となり得る児童発達支援センターの今後の在り方についてキーワードを基に概念抽出を試みた。16名の関係者の聞き取りから主要な語りの共通性を抽出し、最終的に概念図を作成した。その結果、35の焦点的コードと15のカテゴリー、及び4つの上位カテゴリー(①継続的な療育を通した支援、②母親を中心とする家族支援の充実、③子どもや保護者の支援につながる地域連携の推進、④地域で求められるセンターの役割と方向性)が生成された。各上位カテゴリーについて検討した結果、①支援者、関係者はソーシャルワーク的な視点を持って障害のある子どもや家族を支えていくことの必要性、②多様なニーズを抱える保護者に対する早期からの相談支援システムの構築の必要性、③広域圏の児童発達支援センター同士のネットワークの構築の必要性などが示唆された。本調査結果は、2021年度の大学紀要(「質的調査を通した今後の児童発達支援センターの役割と方向性」ライフデザイン学研究17号,pp.329-347)に掲載した。 前年度のアンケート調査からも、児童発達支援センターの設置数は年々漸増傾向にあり、均等な質的サービスを提供するために、広域圏の横軸の連携は欠かせないと考えられる。また、多くの関係者から、行政組織との連携の必要性が語られた。例えば、各行政区の地域自立支援協議会やその下部組織(障害児者サービス部会、医療的ケア児支援連携部会等)を活性化させていくことで、地域における児童発達支援がより充実したものになると考えられた。 事例分析に関しては、今年度は昨年度と異なる2つの児童発達支援センターと連携を行い、園内のコンサルテーションを進めながら、複数の事例対象児を特定し、発達促進の方法等を展開している段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に関しては、前年度に実施したインタビュー調査の再検討を行い、質的分析法を用いて改めて分析しなおした。その結果、今後の児童発達支援センターが担うべき役割として、広域圏におけるセンター及び多様化する地域の児童発達支援事業所等との連携や、各機関が有機的に連携し合える広域ネットワークの構築を進めることの必要性などが改めて示された。関係者の語りからも、「センターとして「無いサービスを作っていく」ことが大事だと思う。地域のニーズに合わせたサービス作りを立ち上げていくこともセンターの役割だと思う。行政からそうしたサービスを作ることは難しいので、逆にこういうニーズがあるからお願いをしたいという要望を市町村の特性に合わせて発信していくこともセンターの役割の一つだと考える」などの意見が示された。このような意見に代表されるように、地域のセンターが中心になり、管轄地域の行政と連携・協働し、地域の児童発達支援で足りない事業等を模索・検討していくことが重要であると考えられた。 事例分析に関しては、前年度と異なる2つの児童発達支援センター及び研究代表者が継続的に関わる保育園と連携し、園内環境の見直しなどのコンサルテーションを進めながら、対象児を特定し、保護者の了解を得た上で、事例検討を進めてきた。 保育園で前年度から継続的に関わる障害幼児(年長児)に関しては、園や関係者(学校や療育機関等)と連携しながら、縦軸の移行支援の事例検討を進めてきた。当児童は4月から地域の小学校の通常学級に入学しており、移行先の小学校と連携しながら、学級の中でより適応できるように、引き続き、間接的な支援を展開していく予定である。 海外調査に関しては、コロナ禍の影響などから昨年度内での実施が難しかったため、今後の海外情勢などを十分踏まえながら、安全面に配慮して、適切な時期に実施していきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は研究の最終年度に当たるため、これまでの研究成果を踏まえ、前年度から継続的に関わっている保育所(埼玉県)及び2つの児童発達支援センター(神奈川県)を中心に、児童発達支援事業所等における適切な療育及び支援内容の検討等を実証的に進めていく予定である。就学前療育機関や特別支援学級、特別支援学校の幼稚部・小学部段階では、言語発達(ことばの理解や表出等)に様々な困難さを抱える幼児・児童が多いため、音声ペン等のICTツールを用いた発達促進の手法や、日々の療育の内容、その在り方等について検討していく予定である。具体的には、上記の関係機関や研究協力者等と連携を取りながら、日々の療育活動や授業の中で音声ペン等のICT機器を活用してもらい、個々の事例児の言語発達の変容等について継続的に検証していく予定である。 また、前年度に引き続き、埼玉県内の保育所と連携・協働し、保護者及び関係者(園長・保育士等)の承諾が得られた(明確な障害が認められる)児童を対象に、小学校への移行支援に関する事例分析を追跡的に行い、地域における障害幼児の包括的支援体制モデル構築のための一助としていきたい。 国内外の先進地域の実地(現地)調査に関しては、コロナ禍の情勢次第ではあるが、感染が終息し、渡航に制限が無くなった際には、海外の実地調査を検討していきたい。視察先の候補国としては、研究分担者が関わっているフランス国内の保健センターや保育所、小学校、児童の発達に関係する機関などを視察し、欧州における個別家族支援計画(IFSP)の作成や支援の現状について集約していきたい。諸事情で海外調査が難しい場合は、国内の先進的な地域(福岡県糸島市、北海道伊達市、他)を複数調査していきたい。また、これまでの研究成果等を総合的に集約し、最終的な「研究成果報告書」の作成に役立てていきたい。
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Causes of Carryover |
前年度予定していた海外調査及び国内調査に関しては、コロナ禍の影響等で実施できなかったため、その分、計上していた旅費(海外調査用:3名分)に残額が生じている。今後のコロナ禍の状況や、海外の渡航先の安全面等が最優先されるが、今後の海外の情勢を十分鑑みながら、今年度内での海外調査を検討していきたい。なお、現時点での訪問先としては、研究分担者と関わりの深いフランスを始め、欧州の複数の福祉先進国(イギリス、ノルウェー王国等)の視察を予定している。 また、諸事情で海外調査が難しくなった場合は、国内の先進的な地域(福岡県糸島市、北海道伊達市、他)を複数調査していきたい。
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