2019 Fiscal Year Research-status Report
発達障害等の傾向を有する少年院在院者への認知機能強化介入プログラムの有効性
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19K02643
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮口 英樹 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (00290552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮口 幸治 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20706676)
石附 智奈美 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (50326435)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 境界知能 / 少年院 / コグトレ / 感覚プロファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、少年院収容者の中でも特に境界知能者該当する者を対象に生活自立活動能力の向上、就労支援を目指した認知トレーニングのシステム作りを目的としたものである。したがって境界知能者の認知機能向上だけでなく、社会生活支援における課題を保護観察官等実際に支援にあたっている専門家を対象に聞き取り調査を行い、トレーニングを改良・充実することを目指している。令和元年度は、広島保護観察所および広島少年院の協力を得て次の3点について調査を行ったのち、内容を反映させた認知トレーニングを予備的に試行した。 ①境界知能者の社会復帰支援における課題の構造化 保護観察所等からの協力を得て、少年院出院後の具体的事例の課題を3名の保護観察官等から聞き取り調査し、就労を含む日常生活活動分析法に基づいて要素を構造化した。調査の結果、認知機能に関わる課題だけではなく、他者の言動や行動が気になるなど人間関係に係るトラブルが多いことが確認された。 ②神経心理学的テストを用いた境界知能者への認知機能アセスメント 少年院収容者16名を対象に神経心理学的テストを行った結果、DN-CASでは、特異的な機能よりも全般的に低下していた。表情認知テストの成績が低い者が含まれていた。WMS-Rの論理的記憶は全体的にスコアが低かった。 ③感覚プロファイルを用いた自閉症スペクトラム傾向の把握 日本版感覚プロファイル短縮版において、すべてのセクションが平均的であったのは、8名中1名のみであった。「高い」と評定されたセクションで最も多かったのは『聴覚フィルタリング』であり6名が該当した。次に『触覚過敏性』、『低反応・感覚探求』において5名が該当した。聴覚フィルタリングおよび低活動・弱さの特徴に該当する少年たちの割合が高く、特に環境によって言葉による聞き取りが困難なことや耐久性が低いため作業が長続きしにくい等の問題が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、当該施設の法務教官と協力し、プログラムの予備的実施、コントロール群を設定した効果検証を実施することが出来た。これは、研究協力施設との連携が計画以上に順調に進んだためである。 対象者の選定には、一般就労と福祉的支援の狭間にある者(おおむね境界知能者に相当)、社会での継続した就労と円滑な社会復帰を望んでいる者を条件とし、知的能力等を作業療法士,教育担当職員等が総合的に判断して選出した受講候補者のうち,最終的に実施施設により承認が得られた16名とした。選定には、独自に作成したチェック表(POTP)を用いた。このチェック表は、就労等に必要な要素を集めた複数のチェック表を参考にし、保護観察官への聞き取り調査結果を踏まえて独自に作成したもので、本研究の成果物の一つである。 指導期間はおおむね4か月、1単元(90分)とし全14単元行った。指導者は、作業療法士及び法務教官とした。受講者数は、16名を8名ずつに振り分け2グループ(A介入群,Bコントロール群)とした。プログラムの実施後は介入グループにおいてDN-CASの平均スコア(A:79.1→93.9、B:82.8→88)が大きく向上した。得点の向上は同時処理と注意の点数で大きかった。これはSDMT(A:52.3.→61.2, B:50.8→53.1)の向上により処理速度があがったことが推測された。また、介入群ではWMS-R論理的記憶の遅延(A:13.6→23.9、B:20.3→23.9)が大きく向上した。また、日本語版トークンテストでは、(A:159→164.8、B:159→160.6)と指示に従う力が向上した。 以上、介入前後の結果から感覚プロファイルで示された聴覚フィルタリング機能の低下が不適応行動の原因になっており、認知トレーニングによって改善できる可能性が分かったことは大きな進捗理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に得られた予備的認知トレーニング結果を分析し、対象者の感覚・認知特性に合わせた、集団トレーニング、個別トレーニングが必要な認知課題を選定し、対象者が年間通して行うために最適なワークシートの組み合わせを含めたプログラムを完成させることが目的となる。予備的プログラムによって明らかになった課題は、は少年院の法務教官の負担度、時間的制約などを考慮し、トレーニングの頻度、1 回の施行時間、内容等を再検討することである。特に、聴覚フィルタリング機能を強化するプログラムの追加およびアセスメントの選定は重要課題となる。プログラムの再検討には申請者、研究分担者、研究協力者に加え、広島県内の就労支援、就労移行支援事業所の作業療法士等にも意見をもらいながら進める。今年度は、同一施設内での再検討とするが、次年度以降、全国の他施設および矯正施設以外での活用も視野に入れる。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進んだことによる調査および打ち合わせを含む会議回数の増加により研究協力者への謝金等が増額したことが主な理由である。合わせて、必要な評価シートの不足が生じたため前倒しで購入した。今年度は前年度分を見込んでいるため不足は生じない。
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Research Products
(3 results)