2022 Fiscal Year Annual Research Report
災害トラウマの回復過程における子どものナラティブと応答的な生徒指導実践の検討
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19K02798
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
上田 孝俊 武庫川女子大学, 教育研究所, 嘱託研究員 (30509865)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パイダゴーゴスとしての教師 / 生徒のナラティブの自認 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.2022年8月1日~3日、宮城県亘理町立荒浜小学校の教育実践(元教諭・渡邉隆氏)、福島県浪江町立なみえ創成小・中学校の取り組み(各校長、教諭、教育長)、宮城県東松島市桜華小学校の生活指導の課題(校長、教諭)に関する調査を行った。渡邉氏は、①震災後、学校が他校に間借りする生活で子ども達の「安心」が奪われたこと、②転校した子どもも内向的になり不登校に至るケースも多かったことを述べられ、粗暴さを呈するようになった子どもに対して教師は「見ているしかない」という実態であったことも語られた。「見ているしかなかった」ことは「なぜこれほど荒れるのかわからない」ということで、「子ども自身にも自覚されないほどの傷を受けていた」という教師側の認識にたどり着かせた。同様の教師の捉え方は桜華小へのインタビューでも窺えた。 2.2023年1月10日~11日、福島県南相馬市において放射能汚染下での12年の課題を調査した。甲状腺ガンを発症された方は、治療中の感情、現在の市内での生活不安を語られ、つづいて家族が維持されることが困難となっている事例を取り上げ、その共感部分と家族の個々の位置(就学中の子どもを抱える母親であれば、この子を連れて南相馬には戻れない等)による相違を述べられた。 3.2023年2月6~7日、仙台市みやぎ教育文化研究センターで研究協力者が一堂に会し4年間の総括討論を行った。①調査研究の全体報告と協議課題について上田が提起し、②土屋直人(岩手大学)から「震災後の教員の状況と困難課題」、③上田から「震災下での援助者の意識形成」、④高橋孝子(豊中市教育委員会)から「震災・放射能汚染下での学校の再開と教員の葛藤」、⑤渡邉由之(東大阪大学)から「被災地での学校再開と子どもの困難性への応答」、⑥高橋達郎(みやぎ教育文化研究センター)から「高校生の被災死亡の実態と、高校・教育行政の対応の課題」の報告と討論を行った。
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