2022 Fiscal Year Research-status Report
教職大学院と博士課程を接続するEd.D.カリキュラム・指導法の開発的研究
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19K02886
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
倉本 哲男 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (30404114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹藤 博文 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70523380)
中野 真志 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90314062)
高橋 美由紀 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (30301617)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Doctor of Education / 教職大学院 との接続 / Action Research / 教師教育の高度化・国際化 / Ed.D.学外審査委員 |
Outline of Annual Research Achievements |
伝統的な社会科学としてのPh.D.とは異なり、Ed.D.とは、教育実践を対象とした実践者の専門職博士であり、自己(関係)実践を改善する上で、これまでの実践的経験、新しく学んだ学的知識、データ処理等を駆使し、問題解決的に研究知へと変換する研究的行為の総体的な学位と概括できる。 我が国の場合、文科省「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」(2017)は、「我が国では、教職大学院につながる教員養成の専門学位としての博士の学位が存在しないため、教職大学院修了者も現在はPh.D.の性格が強い『博士(教育学)』を取得している状況であり、教職大学院で得られる学位『教職修士(専門職)』の上に置く、実践性を重視した博士の専門学位が必要」と指摘している。更に、わが国ではEd.D.についての定義や共通認識がなく、よって、海外事例も参考にしつつ、現在の「博士(教育学)」の学位との相違、将来的な方向性についての検討が必要とも論じられている。 そこで,今年度の最大の成果は,以下のゼミ生の指導結果である。 愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(博士後期課程)馬場洸志「アメリカの高等教育機関における Community Engagement Professional に関する研究~サービス・ラーニングコーディネーターに焦点をあてて~」【博士ゼミ生・学位取得2022年】また,2023年度も学外審査員として2名(研究分担者・中野先生の博士院生)のEdD的な指導予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、The Carnegie Project on the Education Doctorate(CPED)の最優秀賞を受賞したハワイ州立大学(UH)に関する調査 1と調査 2を中心に、そのEd.D.カリキュラム内容とプロジェクト、及びルーブリックによるEd.D.論文の審査基準等について論じた。 一方、全米的な傾向については、US教育省による 2015~2016の約 8400校の調査では、校長の学位取得者は、修士 61.3%、博士学位(Ph.D./Ed.D.)9.9%との結果になっている。(US教育省 2017)。特にEd.D.専攻は、教育管理職と教育政策、及び専門的実践(カリキュラム開発論等)関連のコースが典型的であり、そのEd.D.博士論文の題目は、単位学校システム、州レベル、及び地域学校群の改善にとって、効果的な教育政策や教育実践について焦点化されている。
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Strategy for Future Research Activity |
我が国のEd.D.の展開にとって有意義な示唆の一つに、UHの典型事例が示すようにEd.D.とARの整合性に関する研究(Ed.D./AR)が挙げられる。 UHのEd.D./ARとは、既述のように「自己(関係)実践の改善を通して、教育的資質・能力に関する自己成長を実感できる第一人称の実践研究であり、実践に関与・観察しながら省察(Reection)と実証によって自己(関係)実践を発展するもの」と定義され、実践研究の方法論やリサーチデザインを学び、可能な限り体系的に一般化し、省察を通して実践の反復可能性を求める点に大きな特徴がある。 上述の視点を踏まえ、より具体的なEd.D./AR能力とは、「①教育事象の因果関係を把握し、学校教育が抱える諸問題に対応した研究能力。」「②学術的知見を再構築し、教育方法、教材を開発する研究能力。」「③理論と実践の検証能力(データ処理能力)を身につけ、学校教育の実践を理論化し、指導に活かす能力。」等と整理でき、結論的に本研究からの示唆は、Ed.D.レベルの授業論や論文指導論等に対する有意義なヒントになり得る。 UH事例に限らず、アメリカにおけるEd.D.の研究動向は、これからの我が国の教職大学院の発展、及び「Ed.D.的な博士課程」と修士課程の接続課題も踏まえつつ、教育系大学院の展開において、研究価値を持つと考えられ、今後も益々、注目される。よって,上述の観点を最終年度において再整理することが研究のゴールとなる。
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Causes of Carryover |
以下の点を研究の目的としたが,コロナの影響下で思うように展開できなかった。しかし,2023年度まで延長することで一定の対応ができると見込んでいる。 Ed.D.モデルを検討する本学の博士課程は、修了者が高度で専門的な教育・研究に従事するため 以下のアクションリサーチ(AR)の3能力の習得を目的としている。AR 能力1. 教育事象の因果関係を把握し、学校教育が抱える諸問題に対応した研究能力。AR 能力2. 学術的知見を教科内容として構成し、教育方法、教材を開発する研究能力。AR 能力3. 理論と実践の検証能力を身につけ、学校教育の実践を理論化し、指導に活かす能力を意味している。そこで、これを援用し、博士院生の指導効果を質的・量的に検証することで、教職大学院との接続を図る博士課程Ed.D.モデルカリキュラム・指導法の開発を研究目的とした。特に,アメリカにおけるEd.D.の研究動向は、これからの我が国の教職大学院の発展、及び「Ed.D.的な博士課程」と修士課程の接続課題も踏まえつつ、教育系大学院の展開において、研究価値を持つと考えられ、今後も益々、注目される。よって,上述の観点を最終年度において再整理することが研究のゴールとなる。
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Research Products
(3 results)