2020 Fiscal Year Research-status Report
企業が理工系人材に求めるコンピテンシーと大学に求めるカリキュラム
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19K02891
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
藤墳 智一 宮崎大学, 教育・学生支援センター, 准教授 (30248637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 圭一 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 教授 (30249924)
稲永 由紀 筑波大学, 大学研究センター, 講師 (80315027)
飯吉 弘子 大阪市立大学, 大学教育研究センター, 教授 (00398413)
とう 鋼 宮崎大学, 工学部, 教授 (90237040)
淡野 公一 宮崎大学, 工学部, 教授 (50260740)
山下 敏明 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (80191287)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エンジニア育成 / コンピテンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学部卒の理工系人材に対して求められているコンピテンシーを企業の視点、そして、高専、専門学校との比較から明らかにすることにある。具体的には、企業で働くエンジニアへのインタビューによって収集したデータからリアリティのあるコンピテンシーを再定義する。また、分析結果に基づいてより効果的な大学のカリキュラムについて検討を加える。 研究計画は、(1)関連する研究文献のレビュー、(2)関連する政策文書のレビュー、(3)調査の設計と実施、(4)データ分析と成果の公表、の4段階に分かれる。吉本、稲永、山下、飯吉をグループリーダーとする4つの研究チームがそれぞれに当たる。 本年度はインタビュー調査に先立ち論文「自己決定学習からみた企業の能力開発」(藤墳 2021)において企業の能力開発に関する政策、実態、課題をまとめた。政府が公表するデータから、能力開発への企業支出および実施率が先進国の中で低水準であること、能力開発は労働者負担による自己啓発への依存が大きいこと、大学の活用において企業の関心が、労働者を既存の教育プログラムへ派遣することから、大学と共同で新たに教育プログラムを開発することへと、大きく転換していることなどの現状を明らかにした。産学連携の能力開発の促進には公的な財政支援の拡充が課題となっている。 こうした企業の動向をふまえ、インタビュー調査では実際の人事担当者のビジョンと関心に関するデータを収集する。とくに、労働者がキャリアをとおして高い生産性を維持するために必要な条件、また、労働者の能力開発に対して高等教育機関との効果的な連携の形態について考えを聞く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は、(1)関連する研究文献のレビュー、(2)関連する政策文書のレビュー、(3)調査の設計と実施、(4)データ分析と成果の公表、の4段階に分かれる。 (1)関連する研究文献のレビューは次年度も継続する。本年度は海外の工学教育に関する文献調査を実施した。これらはおおむね予定通り進展している。工学教育に関連する研究のレビューから、主に次の点が明らかになった。エンジニアのコンピテンシーをめぐって、1980-1990年代を中心に米国国立科学財団(National Science Foundation)、全米研究評議会(National Research Council)、全米工学アカデミー(National Academy of Engineering)、米国工業教育協会(American Society of Engineering Education)など様々な組織において議論され、その結果はEngineer Criteria 2000という教育プログラム評価における学習成果基準へと集約された。 (2)関連する政策文献のレビューは次年度も継続する。本年度は国内の文献とデータを中心に分析と要約をおこなった。これらはおおむね予定通り進展している。企業における能力開発に関連する政策文書のレビューから、主に次の点が明らかになった。OJTやOFF-JTの実施率には産業分野や企業規模による差が大きく、1人当たりの教育訓練費用は企業負担のOJTやOFF-JTより労働者負担の自己啓発の方が大きい。また、先進国との比較では日本企業の能力開発の実施率は極めて低く、今後、能力開発の拡充に向けた財源の多様化が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は、(1)関連する研究文献のレビュー、(2)関連する政策文書のレビュー、(3)調査の設計と実施、(4)データ分析と成果の公表、の4段階に分かれる。 (1)関連する研究文献のレビューでは引き続きカリキュラム改革に関する文献を収集しレビューに加える。 (2)関連する政策文書のレビューでは、引き続き米国における工学教育関連の文献を加え、論文にまとめる。 (3)調査の設計と実施は2021年度におこなう。本研究の主たるデータは国内の大企業におけるインタビュー調査によって収集する。2-3社の調査を予定している。インタビューは大卒、高専卒、専門学校卒いずれかの中堅エンジニアと複数の専門家によるディスカッション形式を採用する。トランスクリプトに起こしたデータは、理論研究をとおして構築したコンピテンシーの仮説から内容を分析し、既存のコンピテンシーの概念と比較する。 (4)データ分析と成果の公表は2021年度におこなう。企業調査終了後は研究セミナー等を通じて結果のまとめと執筆に取りかかる。結果に基づき学士課程教育に対して提言をおこなう。これまでのところ、理工系人材のコンピテンシーでは、広範な知識、課題解決能力、自立と責任、チームワークの4つの側面が重要であることがわかっており、それらの習得がカリキュラム改革の課題となる。本研究では、もうひとつ、4年間の総仕上げとして重要な役割を果たしてきた卒業研究についてその貢献と改善点を検証する。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルス感染症のいっそう深刻な影響を受け、予定していた企業訪問調査を実施することができなかったため。そこで、インタビュー調査の実施とデータ分析は来年度着手することとする。
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Research Products
(1 results)