2021 Fiscal Year Research-status Report
ニーズ表明の難しさを踏まえた対話プロセスを実現する:発達障害の子どもと合理的配慮
Project/Area Number |
19K02904
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 由里子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (10466865)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 ルミ 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教育学研究員 (30726203)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 合理的配慮 / 建設的対話 / 障害の社会モデル / ニーズ表明 / 社会的障壁 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のねらいは、学校教育現場で合理的配慮が提供される際の対話プロセス(建設的対話)に着目し、それがニーズ表明にあたって子どもたちが経験しているさまざまな難しさをふまえたかたちでなされるための環境や条件、方法論を、学校関係者とともに明らかにしていくことにある。具体的には、(1)「障害の社会モデル」の考え方とそれにもとづく合理的配慮理解を醸成することを目的とした研修プログラムの開発と試行実施、(2)学校関係者自身が現在の対話プロセスの点検・改善を行うことをサポートするための研修プログラムの開発と試行実施、(3)開発した研修プログラムの効果検証を行う。 2021年度は、前年度に開発した(1)の研修プログラムを7校の小学校教員に対して実施するとともに、(2)の研修プログラムを開発し、6校の小学校教員に対し実施した。また、これら研修の効果を確認するための指標開発に向け、「社会モデル」にもとづく合理的配慮理解を確認するアンケート調査を実施し、931名から回答を得た。 その結果、学校関係者の間に、合理的配慮の提供により障害のある子が有利になってはいけないという誤解が広く存在していることがわかった。既存のあり方を「公平」とみなしていると、合理的配慮は障害者を有利に扱うもののように見えてしまう。その結果、合理的配慮の提供が抑制される傾向にあることが予想される。こうした状況を改善し、合理的配慮の円滑な提供を実現していくためには、障害のない子を念頭につくられてきた既存の学校のあり方を問題視する「社会モデル」の考え方が鍵になることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、個別の学校に加え、自治体レベルでの協力を得ることができたため、開発した研修プログラムの施行実施および効果測定指標の開発に向けたアンケート調査を円滑に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、開発した研修プログラムの実施を継続するとともに、2021年度に作成した合理的配慮の理解度を確認するアンケート用紙を用い、研修の前後でどのような変化が見られるのか、また研修を受講した人としていない人との間にどのような違いが見られるのかを確認する。 加えて、(2)の研修プログラム受講者に対してヒアリング調査を行い、子どもとの対話プロセスを見直すことで、(それまで見えなかった)どのような社会的障壁が見えるようになったのか、また、それにより子どもや自分自身、両者の関係にどのような変化が生じたのかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の中、本研究の遂行にあたって必要な実践(研修の試行実施)と調査は、これまですべてオンラインで行ってきた。2022年度は、協力校を直接訪問し実践・調査を行いたいと考えており、そのために必要な物品費(ビデオカメラやマイク等)と交通費、および調査データの整理・分析に必要な人件費を次年度使用額に残している。
|