2022 Fiscal Year Research-status Report
ニーズ表明の難しさを踏まえた対話プロセスを実現する:発達障害の子どもと合理的配慮
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19K02904
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 由里子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任准教授 (10466865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 ルミ 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (30726203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 合理的配慮 / 建設的対話 / 社会モデル / ニーズ表明 / 社会的障壁 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のねらいは、学校教育現場で合理的配慮が提供される際の対話プロセス(建設的対話)に着目し、それがニーズ表明にあたって子どもたちが経験してい るさまざまな難しさをふまえたかたちでなされるための環境や条件、方法論を、学校関係者とともに明らかにしていくことにある。具体的には、(1)「障害の 社会モデル」の考え方とそれにもとづく合理的配慮理解を醸成することを目的とした研修プログラムの開発と試行実施、(2)学校関係者自身が現在の対話プロ セスの点検・改善を行うことをサポートするための研修プログラムの開発と試行実施、(3)開発した研修プログラムの効果検証を行う。 2022年度は、(1)と(2)の研修プログラムの対象者を中学校教職員に拡大し、(1)については3校の教職員に対して、(2)については15名の教職員に対し実施した。また、(1)と(2)の受講者に対し、ヒアリング調査を開始した。 (3)の効果検証に関しては、2021年度に開発した①「社会モデル」にもとづく合理的配慮の理解度を確認する指標に加え、②構造的不均衡への感受性、③状況理解の多面性、④「社会モデル」にもとづくインクルーシブ教育の理解度を確認するための指標を追加したアンケート調査を実施し、600名(小学校482名;中学校118名)の教職員から回答を得た。 その結果、②構造的不均衡への感受性について、小学校教員と中学校教職員の間で有意差があることがわかった。このことから、後者の方が既存の社会や学校の状況を「公平」と捉える傾向が高く、そうした傾向が合理的配慮提供に向けた対話の場においてバリアとして機能している可能性が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に引き続き、2022年度も自治体レベルでの協力を得ることができた。その結果、開発した研修プログラムの施行実施および効果測定指標の開発に向けたアン ケート調査の対象を、中学校教職員にも拡大して進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に研修受講者を対象に開始したヒアリング調査を継続する。また調査結果を通して、研修を通し、どのような社会的障壁が見えるようになったのか、それにより子どもや自分自身、両者の関係性にどのような変化が生じたのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
経費は、書籍や研修で使用する動画を制作するための機材の購入費の他、研修実施先(大阪府、山形県)への旅費、アンケート調査およびヒアリング調査で得られたデータを整理するための人件費と交通費に使用した。
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