2023 Fiscal Year Annual Research Report
Neural basis of phonological processing and literacy in children with autism spectrum disoder
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19K02952
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉村 優子 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (70597070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 早苗 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (80811372)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 聴覚誘発反応(P1m) / 読み書き能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, 以下ASD)は、行動や社会性の問題が注目されがちであるが、発達性読み書き障害(発達性ディスレクシア)の並存による学習の問題も指摘されている。しかしながらASDがあり、読み困難を示す児について、その神経基盤や初期の特徴については明らかになっていない。本研究の目的は、ASD児を対象に就学前から就学後の追跡的調査を実施することにより、早期の聴覚情報の中枢処理である生理学的データが同児の学齢期の認知機能や読み書き能力を予測する指標になりうるかどうかについて検討することである。 ASD児20名(男児15名、女児5名)、初回時平均月齢72±15.7か月対象に、人の声「ね」に対する脳反応を幼児用脳磁計(Magnetoencephalography,MEG)で捉えた聴覚誘発反応(P1m)を左右半球それぞれから検出し、生理学的指標とした。追跡調査時(追跡時平均月齢136±25.2か月)に、K-ABCⅡを実施し、読み書き能力に関連する行動学的指標として習得総合尺度の下位項目である「言葉の読み」「言葉の書き」の評価点をそれぞれ用いた。 左右半球のP1mの振幅、潜時をそれぞれ従属変数とし、初回参加児の月齢、追跡時月齢、言葉の読み、言葉の書き評価点を独立変数として投入した重回帰分析により、P1mの反応と読み書き能力の関連を調べた結果、言葉の読み評価点の間に有意な負の相関が示唆された。初回参加時及び追跡時の月齢、書き尺度との有意な相関はいずれも認めなかった。左半球P1mの振幅及び右半球のいずれの指標においても有意な関係は認められなかった。聴覚誘発磁場の潜時の速さは脳神経細胞の成熟、すなわち髄鞘形成の進み具合を反映するという知見を踏まえると、読み困難を伴うASD児では、初期から音声処理にかかわる脳領域の発達の未熟さがあると考えられる。
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