2020 Fiscal Year Research-status Report
身の回りの多彩な機能をもつ化合物を利用した化学教材から次世代物質変換反応への展開
Project/Area Number |
19K03165
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 俊彰 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (20332257)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | インジゴカルミン / メチレンブルー / π共役系複素環式化合物 / 空気酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
着色料であるメチレンブルーは、水酸化ナトリウム水溶液中でのグルコース等の還元糖の空気酸化に触媒活性を示す。メチレンブルーは強アルカリ性水溶液中では徐々に分解するため、炭酸ナトリウム水溶液や石灰水(水酸化カルシウム飽和水溶液)の利用について検討し、いずれも60℃程度に加熱することにより、水酸化ナトリウム水溶液と同等の活性がみられることが分かった。 糖以外の反応基質については、ジエチルアミンを溶媒として用いることにより、ベンゾイン類ArCOCH(OH)Arの空気酸化反応が触媒的に進行し、単離収率56% (Ar = C6H5)、63% (p-CH3C6H4)で得られた。また、他のπ共役系複素環式化合物として、メチレンブルーと同じくフェノチアジン構造をもつBasic Blue 17とBasic Green 5、フェノキサジン構造をもつBasic Blue 3とBasic Blue 12、チアジン構造をもつBasic Red 2(サフラニンO)についても検討し、同様にベンゾインの空気酸化反応に触媒活性を有することが分かった。 一方、着色料青色2号のインジゴカルミンを用いた場合には、ベンゾイン以外にも、グリコール酸HOCH2CO2Hや乳酸CH3CH(OH)CO2H、マンデル酸PhCH(OH)CO2Hの空気酸化に触媒活性を示し、反応条件について検討を重ねているところであるが、メチレンブルー等のπ共役系複素環式化合物は触媒活性を示さなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メチレンブルー以外のπ共役系複素環式化合物(メチレンブルー類縁体)においても、ベンゾイン類の空気酸化反応に触媒活性を有することが分かった。メチレンブルー類縁体では反応基質がベンゾイン類に限定されたものの、インジゴカルミンを用いた場合には、グリコール酸HOCH2CO2Hや乳酸CH3CH(OH)CO2H、マンデル酸PhCH(OH)CO2Hの空気酸化に対して触媒活性がみられ、反応条件について検討を進めているところである。反応機構の解明や、新たな反応基質の開拓に大きな道筋を示したと考えている。 また、昨年度の研究成果ではあるが、リボフラビン(ビタミンB2)がベンゾインの空気酸化反応に触媒活性を示していることから、新たな反応基質への応用も期待されるところである。 以上の結果より、おおむね順調に進行していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
インジゴカルミンは、フェノチアジンやフェノキサジン、チアジン構造をもつπ共役系複素環式化合物と比較して、触媒的な空気酸化能が高く、適用範囲も広いと推測される。また、反応にジエチルアミン等の有機溶媒を用いる場合には、イオン性のインジゴカルミンよりもインジゴの方が適している可能性もあることから、今後は、インジゴカルミンおよびインジゴを中心に検討し、さらなる反応基質の開拓を行う。 また、昨年度の研究において、ベンゾインの空気酸化に触媒活性を示したリボフラビン(ビタミンB2)についても、より詳細に検討していく。糖類の空気酸化反応についても、反応の生成物を単離することにより、反応機構を解明する。
|