2021 Fiscal Year Annual Research Report
身の回りの多彩な機能をもつ化合物を利用した化学教材から次世代物質変換反応への展開
Project/Area Number |
19K03165
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 俊彰 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (20332257)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メチレンブルー / リボフラビン / π共役系複素環式化合物 / 空気酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚病薬などとして身の回りに存在するメチレンブルーは、π共役系複素環式化合物であり、水酸化ナトリウム水溶液あるいは石灰水(水酸化カルシウム水溶液)中でのグルコース等の還元糖の空気酸化反応に触媒活性を示す。糖以外の反応基質については、アセトインやプロピオインをはじめとする脂肪族α-ヒドロキシケトンRCOCH(OH)R' (R = R' = methyl, ethyl; R = methyl, R' = H; R = hydroxymethyl, R' = H)について検討したところ、空気酸化反応が極めて速く進行することが分かった。しかし、生成物の沸点が低いため、生成物の単離や同定には至らなかった。一方、α-ヒドロキシカルボン酸エステルRCH(OH)CO2R' (R = H, methyl, phenyl)、パントラクトンやグルコン酸無水物のようなα-ヒドロキシ環状エステルについても検討したが、α-ヒドロキシカルボン酸RCH(OH)COOH (R = H, methyl, pheny)の酸化と同様に、反応は進行しなかった。 昨年度までの研究において、ベンゾイン類ArCOCH(OH)Ar (Ar = aromatic group)のような芳香族α-ヒドロキシケトンの空気酸化反応がジエチルアミン溶媒中で触媒的に進行し、ベンジル誘導体ArCOCOArが得られることが分かっていたが、より詳細に検討したところ、TON (turnover number)は、触媒として0.03 mol % のメチレンブルーを用いたときに約1800、リボフラビン(ビタミンB2)を用いたときには約1600であった。他の有機触媒による空気酸化反応において2-10 mol %の触媒を用いていることと比較すると、TONが極めて高く、触媒活性が高いと言える。 以上のように、身の回りには、メチレンブルーやビタミンB2のように、これまで触媒として着目されてこなかった化合物にも空気酸化触媒となり得るような多彩な機能をもつ化合物が存在し、金属や過酸化物などの有害物や危険物を使わない、環境にやさしい次世代物質変換反応を開発できることを明らかにした。
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