2021 Fiscal Year Research-status Report
The gaze synchronizations of listeners in group discussion to contribute the cooperative knowledge construction
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19K03233
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
木下 まゆみ 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (40404909)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 集団討論 / 活性化 / 発言機会 / 視線配布 / ネットワーク分析 / 聞き手 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:今年度も、感染症予防のために従前の集団討論は実施できなかった。そのため、すでに入手済みの録画データを対象に、討論における参加者の視線配布と討論の活性化の関連を検討した。複数人による集団討論では、二者間と異なり、次話者が一意に決定されない。集団での次話者の希望者は、現在の話し手の話者交代の合図を読み取る必要がある。したがって、話し手に向ける視線配布が頻繁である方が、話者交代の合図の読み取りが可能になり、実際の発言も増加すると予想される。 研究方法:6名による約1時間の構造化された討論(LTD(Learning Through Discussion)の録画を用いた。LTDでの各スッテプのうち、発言の自由度が高いステップ6を分析対象とした。視線配布は、話者交代の前後1秒間の聞き手の視線を対象に、話し手を見たかどうかを2名の評定者によってコード化した。また、話者交代の程度は、前年度の研究で提案した次数中心性によって数値化した。次数中心性はネットワーク分析における個々のノード(参加者)に関する指標であり、数値が大きいほど発言が多いことを示す。 結果と考察:他の参加者への視線配布の頻度とその参加者の次数中心性の関連を検討したが、有意な関連は見出せなかった。前年度の研究で、議論を刺激する発言(キー発言)は次数中心性の低さと関連があった。これは、議論が特定の参加者に偏らず、参加者全員で行われたことを示すものと考えられる。そうした望ましい現象としての次数中心性の低下がある中では、話し手への視線配布が単純な発言数を増加させていたとしても、影響を相殺されたがゆえに本年度の研究では一定の影響が見出されなかったかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来の集団討論を実施できない状況が続いている。本研究課題では視線配布を研究対象にしており、今年度は表情計測ソフトによりコーディングの自動化を検討する予定であったが、既存の動画が画角の関係で使用できず、また今年度はマスクをして討論を試みたが、この動画では表情認識が機能せず、次年度以降に持ち越すこととなった。 一方で、【今後の研究の推進方策】に書いてある通り、本年度の研究により、視線配布には注意伝搬効果があることが示唆される。本研究課題では、視線配布の同期性を最終的な検討目的としているが、注意の伝搬現象をふまえると、視線配布には、同時期な同期性に加え、漸次的なものも存在する可能性がある。これは当初の計画では想定していなかった要因であり、これまでの研究により一定の成果を上げているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
集団での学習環境では、注意が参加者間に広がっていく現象 (attention contagion) が報告されている (e.g., Forrin et al., 2021)。これをふまえると、視線配布の影響には、注意伝搬効果を媒介として、有意義な発言を促すという経路も推測される。特に、漸次的伝搬も想定されるとなると、聞き手の視線配布については、発言発生前後のみならず、発言発生から一定の時間経過後での同期性にも注目する必要がある。注意伝搬はオンライン上の学習環境でも確認されている (Kalsi et al., 2022)。対面の集団討論の実施が難しい状況ではあるが、今後も状況が改善しない場合は、オンライン討論を実施して、聞き手の視線配布の同期性について検討を深める予定である。
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Causes of Carryover |
研究課題である集団討論の実施が困難であったため、状況の改善が見込まれる次年度に研究を実施することとした。
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