2019 Fiscal Year Research-status Report
仏教生死観を用いた生涯発達心理学の再考―ターミナルケアと死生観教育への応用
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19K03273
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
近藤 恵 (有田恵) 大阪医科大学, 中山国際医学医療交流センター, 講師 (40467402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 正弘 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50272448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生涯発達心理学 / 仏教的生死観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「仏教生死観を用いた生涯発達心理学の再考―ターミナルケアと死生観教育への応用」では、二つの目的を設定し研究を推進する。西洋や死生学では、死を見据えての生を論じるがゆえに、死生学とされることが多いが、仏教では生の先の死を見据えた生死観が用いられる。一つ目の目的は、生涯発達心理学における「発達」概念を再考し、固有性と関係性の観点(仏教的生死観)から「発達」概念を構築していくことである。いま一つは、仏教の生死観をターミナルケアやいのち教育に応用し、死に直面する人々のQOLを高めるために活用することである。心理学と仏教の関係について、例えば、ユング心理学において、仏教の影響が指摘されており(河合、2010)、ケアにおいては、個から関係性への視点の転換の有用性はすでに議論されている。こうして、学界だけでなく、実際の現場にも貢献することを目的とする。 研究初年度は、「死に向かう心身の変化を、個人ではなく他者との関係性の発達という視点からの捉えなおし」を中心に研究を行った。個から関係性へのいう視点の変容が重要となる場として、葬送儀礼、悲嘆の心理学の文献研究から、人々の「死」の捉え方の変容についての文献研究を行い、喪の過程の変容について明らかにした。喪の過程が共有から個人のものへと回収される傾向が強まるにつれ、遺族の精神的身体的負担が増すことを明らかにした。また、興味深い点としては、この傾向が我が国だけではなく、欧米の国においても同じような傾向がみられることである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年の本年度は、理論研究を中心に遂行する予定であった。具体的には、研究代表者と分担者で、死生学に関する先行研究のうち仏教の生死観に関する文献と生涯発達心理学及びターミナルケアに関する文献を収集検討し、理論枠組を構築することを目指していたが、COVID-19 感染拡大によって、国内外の調査研究が行えなくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、1年目に滞った文献収集及び検討をWeb等の手法を駆使して進め、遅れを取り戻す。また、フィールドワークについては、調査協力者が闘病中の方々であることから、COVID-19感染防止の点からも、過去の事例の再検討等、研究内容を一部変更して研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
2020年初旬に予定していた国内外の文献調査及び検討会が、COVID-19感染拡大によって中止を余儀なくされたため、調査及び検討会を翌年に延期した。繰り越した研究費については、国内外の研究協力者との会議をウェブに切り替えて実施する際の環境整備や資料収集に使用する。
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