身体志向アプローチの効果メカニズムに着眼した心身融合型のトラウマ回復支援法の開発

2023 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 19K03315
• Research Institution: Hyogo University of Teacher Education
• Principal Investigator: 伊藤 大輔 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (20631089)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 大澤 香織 甲南大学, 文学部, 教授 (30462790)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: マインドフルネス / トラウマ焦点化認知行動療法 / マインドフルな気づき / 認知的フュージョン / 否定的認知 / 回避的コーピング

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は，マインドフルネス技法の効果メカニズムについて，「身体―認知―行動」の3つの側面から包括的に検討することで解明し，最終的に身体志向アプローチと認知行動的アプローチを併用した心身融合型の新たなトラウマ回復支援法の開発に行うための知見を収集することである。最終年度は、これまでに得られたデータを用いて再解析を実施し、マインドフルネスの構成要素である「マインドフルな気づきと注意」と「認知的フュージョン」がPTSD症状の改善に寄与している可能性が示唆された。
研究期間全体を通して、マインドフルネスとPTSD症状に関する調査や実験的手続きを用いた基礎研究を複数行うことによって、マインドフルネスに関する構成要素と、従来のトラウマ焦点化認知行動療法で扱われている構成要素(トラウマに関連する否定的認知や回避的コーピング)やPTSD症状との関連を明らかにすることができた。これら一連の研究を通して、これまで国内では明らかにされてこなかったマインドフルネス傾向とPTSD症状の関連やそれらのプロセスに関する知見が得られたことから，従来のトラウマ焦点化した認知行動療法のみならず、マインドフルネス技法がPTSDに対する有効性や援用可能性が示された。ただし、PTSDに対する治療法として、トラウマ焦点化認知行動療法が推奨されており、トラウマ回復支援法として、マインドフルネスのようなトラウマに焦点化しない技法の位置づけや活用法については、引き続き検討する必要がある。
なお、本研究の成果は、複数の国際誌に掲載されている(Ito et al. 2020;2021)。