2019 Fiscal Year Research-status Report
心理療法過程におけるアタッチメント方略の変化に関するDMM-AAIによる検証
Project/Area Number |
19K03335
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
三上 謙一 北海道教育大学, 保健管理センター, 准教授 (90410399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / アタッチメント / 青年期 / DMM / AAI |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの科研費によるDMM-AAIの研究では、日本人のクライエントに対してDMM-AAIを適用することにある程度の臨床的妥当性があることが示唆された。しかし、実質的には2名のクライエントに対してのみ適用しており、心理療法によるアタッチメント方略の変化を検証するためにはまだまだ多くの事例を積み重ねる必要があると思われた。さらに共同研究者の戸田の研究によると、青年期のアタッチメントには親だけでなく、恋人や友人の影響も考慮する必要があることが示唆された。そこで今年度は青年用に修正されたAAIであるTAAI(成人移行期アダルト・アタッチメント・インタビュー)を心理療法を受けていた大学生に実施した。現在、TAAIの分析を行っているところである。最終的にはTAAIによるアタッチメントの分類結果と。心理療法過程を照合して、アタッチメント方略が心理療法過程にどのように影響を与えるのか、また最終的にアタッチメント方略がどのように変化するのか、あるいはしないのかを検討していく予定である。またDMMの全体像を捉えるためにレビュー論文も理論編と研究編の2本に分けて執筆した。さらに海外研究者との交流を深めるために、タイで開催された思春期精神医学会にも参加して、タイ人の精神科医とDMMに関するシンポジウムを共同開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は心理療法によってクライエントのアタッチメント方略がどのように変化するのかという点にある。特に発達上の変化の激しい時期である青年期のアタッチメントがどのように変化するのかを検証するためには心理療法の過程とAAIがどのように対応しているのかを見ることが重要になると思われる。現在データを取ることのできた一事例はTAAIの分類結果と心理療法過程との対応を考察する上で非常に有用であると思われる。また今後の方向性を明確化するために、DMMの理論と実証研究に関するレビュー論文も完成することができた。さらに海外のDMM研究者と共同でシンポジウムを開催することができたため、今後日本のみならず海外の研究者と積極的に交流することによって、自らの研究を発展させていく基盤ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は主にAAIを用いてきた。しかし、AAIは元々職業や家庭をすでに持ち、子どもを育てている自立した成人や親を対象に作成された面接法である。これに対して、未だに経済的にも心理的にも親に依存しつつ、親以外の他者との親密な関係を形成しながら自立を目指している大学生前後(16歳から25歳)の若者に向けて開発された面接法がTAAI(Transition to Adulthood Attachment Interview)である。TAAIは質問項目をより若者の発達課題に適したものに修正した上で、AAIの談話分析を適用するものである。今後はTAAIの講習会を受講して、TAAIを大学生に使用することによって、より若者のアタッチメントを的確に把握することを目指したい。
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Causes of Carryover |
当初予定されていた海外での講習会が開催されなかったため、海外出張費を使用しなかった。今後は海外出張、またはオンライン講習会に使用していく予定である。
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